2017 Fiscal Year Research-status Report
アフリカによる労働履物の創造に関する実践的地域研究:新たな地下足袋文化の探求
Project/Area Number |
16K16662
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 利和 東北大学, 東北アジア研究センター, 教育研究支援者 (50750626)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地下足袋 / Ethio-Tabi / 労働履物 / 履物文化 / 協創 / 実践的地域研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、エチオピアの人びとが、作業中の足を護る「地下足袋」を文化として「協創」する実践の特質を、当事者意識をもつ研究者が参与する過程を通じてあきらかにすることである。エチオピア在来の労働にまつわる履物(裸足)文化と、日本の地下足袋文化が、研究者が働きかけることにより結合し、新たな形で創造されていくというのが本研究の仮説である。そのため、エチオピアの文脈に沿った、地下足袋の1.使用、2.製作、3.販売、4.宣伝について、必要な条件、知識、制度、研究者の役割などを実践的なフィールドワークを通じてあきらかにする。 2年目にあたる平成29年度は8月28日から9月7日の間に2.製作に関するフィールドワークをエチオピア中央高原の調査地ウォリソでおこなった。農民と職人と報告者でともに現地の文脈にそくした地下足袋についてデザインをした。その結果、地下足袋会社老舗「丸五」の製品(hitoe、たびりら)を共有するなかで、ファッション性と機能性を両立するコンセプトが確立した。コハゼがなく、短めの、より強度がある履物と認識される「革製」の地下足袋の製作を目標とした。 地下足袋会社老舗の「丸五」に共有してもらった鉄の地下足袋のラスト(鋳型)を首都アディスアベバのラスト職人に依頼し、プラスチック製のものを模作した。あわせて、製作に必要な材料となる革、接着剤、紐などを購入した。 首都アディスアベバから調査地に裁断と釣り込み・貼付け専門の2人の職人を製作補助として招聘し、ウォリソの職人カッバラ氏がデザインと作業全体の指示、縫製を担当しながら、協働で製作に関する調査をおこなった。その結果2017年9月5日から9月8日までの4日間、合計38.5時間の作業時間で18足の革製の地下足袋が完成した。エチオピアに存在する、人・素材・技術によって、革製の地下足袋が制作できることが本調査によりあきらかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2016年度でも課題となった、エチオピア政情の不安定が引き続き2017年度の調査にも影響した。当初8月10日から9月8日までの期間、調査地ウォリソでフィールドワークを予定していたものの、デモにより調査地までの公共交通機関が停止していた。あわせて、通信状況が悪いなかで、調査地の安全情報などを確認するための時間を必要とした。そのため、8月26日まで調査地入りがかなわなかった。予定していた期間の半分の約2週間しか時間がとれなかったため、当初予定していた、高品質な地下足袋を50足製作するという目的と実践プロセスに関連するデータ収集をおこなえなかった。 あわせて調査期間が制限されたため、予定していた前年度農民に試用依頼をした地下足袋の1.使用に関する追跡調査も十分に実施できなかった。 本研究は1次データに基づく実践的かつ実証的な研究であるため、現段階では、当初計画の計画とおり十分なデータが収集できているとはいえないため、進捗状況はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度までの調査で、1.使用に関しては、エチオピアの農村の人びとは、日本の「丸五」の地下足袋の試用依頼を通じて、履きつぶすまで使いつづけることが、観察や聞き取りによってわかった。2.製作に関しては、エチオピアに存在する人・素材・技術によって地下足袋がつくれることが確認できた。この、調査地域の「人・素材・技術」でつくられる、この地下足袋をグローバルな文脈ではEthio-Tabiとよび、ローカルな文脈ではWoliso-Tabiと呼ぶこととした。今後はこの地下足袋の生産と普及に関してスケールアップをはかる。 2018年度は8月に1ヶ月間の調査期間を予定している。この期間にこれまでの1.使用と2.製作の調査結果を踏まえた上で、 300足のEthio-Tabiの製作を実施し、3.販売と4.宣伝についての実践的な調査を協働で実施する。とくに宣伝に関する実践的な調査をおこなうことにより、地域での認知度を高めていく。具体的には、地元のTVやラジオといったメディアを使った宣伝、現地の文化にあわせた騎馬の練り歩きによる宣伝などで、購入希望者や研究協力者を集う。フェイスブックやツイッター、インスタグラムといった現地でも活用されているSNSを用いて宣伝し、地域で、世界でどのような効果や反応が、得られるか検討する。あわせて3.販売に関する調査と実践がどのように関連づけられるか実証的に検証していく。 以上の1.使用2.製作3.販売4.宣伝の実践的な調査の結果を、相互連関的に検討することを通じて、あらたな労働履物文化として協創をしていくために必要な具体的な知識・条件・制度・研究者の役割などを示す論文をまとめていく予定である。
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Research Products
(4 results)