2016 Fiscal Year Research-status Report
アルジェリアはフランスでどう語られるのか―1990年代以降の政策の観点から
Project/Area Number |
16K16667
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大嶋 えり子 早稲田大学, 政治経済学術院, 助手 (90756066)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 記憶 / ポストコロニアル / 植民地支配 / フランス政治 / 引揚者 / アルジェリア |
Outline of Annual Research Achievements |
なぜフランスの政府や自治体が1990 年代以降になってから、アルジェリアの植民地支配 (1830-1962) および独立戦争(1954-1962) に関連する記憶(以下、アルジェリア関連の記憶)を承認するようになったのか、そして、アルジェリア関連の記憶の承認において国家の責任がどう捉えられているのかを明らかにすることを目的とした研究である。 以上の目的を掲げ、2016年度はアルジェリアからフランス本土に主に1961年から1962年にかけて移住したヨーロッパ系住民について調査を行った。先行研究の検討に加えて、市民団体を結成し活動している者もいるため、市民団体の活動履歴や刊行物を考察した。とりわけ、研究では南仏に位置するペルピニャン市にある資料館 (Centre de Documentation des Français d'Algérie, CDDFA) が開館した過程を分析した。この資料館には引揚者団体が関係しており、その引揚者団体と市政の密接な関係に注目した。ペルピニャン市の事例に関しては、市議会に引揚者団体の者が選出されていたり、引揚者がペルピニャン市において票田を形成している、などといった点がCDDFAの開館い結び付いたことが明らかになった。また、植民地支配を礼賛し、植民地支配により生じた先住民に対する被害を度外視する展示がCDDFAで行われており、そうした内容に対して批判的な人権保護団体や政党、研究者がおり、反対行動を行ったにもかかわらず、学術委員会などによる監修がない常設展示が続いている点が指摘できる。 一方で、自治体レベルではない、国家レベルにおける記憶の承認の取り組みについても検討した。その結果、植民地支配におけるフランスの責任を認めれおらず、移民統合と国民統合を促進する政策と関わっていることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ペルピニャン市の資料、引揚者団体の刊行物・文書の収集および分析はほぼ完了した。 移民統合政策と国民的結合に関しては統合高等評議会などの政治系機関の報告書、上下院の審議の議事録、新聞などで報じられた主要政治家の発言などを取り上げ、植民地支配とその責任という観点からの考察もほぼ完了した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2017年度は研究成果を発表していく。また、英語論文の投稿を予定している。
|
Causes of Carryover |
発表を予定していた国際ワークショップへの参加がキャンセルになったため、フランス渡航が不要になった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
英語論文の校正・投稿に使用する。
|