2016 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本における男性同性愛者と親密な関係性に関する研究
Project/Area Number |
16K16669
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前川 直哉 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 特任研究員 (20739156)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 男性同性愛 / ジェンダー / セクシュアリティ / 親密性 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施計画に従い2016年度には「先行研究の調査、知見の整理」および「男性同性愛に関する史料調査・分析」を行った。 「先行研究の調査、知見の整理」としては、男性同性愛に関する歴史社会学的な研究を中心に、ジェンダー/セクシュアリティに関する国内外の諸研究を調査し、知見を整理した。特に戦後日本の男性同性愛に関する海外研究者の業績(英語文献)については、勉強会の実施や他の研究者との議論を重ね、より細かな読み込みを行った。また、異性間の関係性を対象とした親密な関係性に関する先行研究についても、調査と知見の整理を行った。 「男性同性愛に関する史料調査・分析」としては、男性同性愛を大きく取り上げた戦後の変態雑誌、会員制同人誌、男性同性愛専門誌を史料の中心とし、男性同性愛者が希求する親密な関係性に関する言説の抽出と分析を行った。2016年度は読者からの投稿や「相手探し」のための文通欄、および記事内容の分析を中心に行った。研究を進めるにつれ、この調査・分析が本研究課題の中核に位置付けられることが明らかになってきたため、「男性同性愛に関する史料調査・分析」は2017年度以降も引き続き継続して行う予定である。 また上記の研究に加え、2015年に学位授与された博士論文「近現代日本における「男性同性愛者」アイデンティティの受容過程」を深める作業を行った。具体的には、論文「男性同性愛の戦後史研究とジェンダー」(『歴史評論』2016年8月号)を発表するとともに、2017年4月刊行の単著『〈男性同性愛者〉の社会史――アイデンティティの受容/クローゼットへの解放』(作品社)の執筆作業を行い、本研究課題の前提となる「男性同性愛者」アイデンティティの受容過程についての分析をさらに深化させた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画の通り「先行研究の調査、知見の整理」および「男性同性愛に関する史料調査・分析」について十分な研究を行うことができた。またそれに加え、論文「男性同性愛の戦後史研究とジェンダー」(『歴史評論』2016年8月号)の発表と、単著『〈男性同性愛者〉の社会史――アイデンティティの受容/クローゼットへの解放』(作品社)の執筆作業を通じて、本研究課題を今後進めていくうえで重要な、近現代日本における「男性同性愛者」アイデンティティの受容過程についての分析をさらに進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2017年度は研究実施計画に従い「男性同性愛に関する史料調査・分析」および「異性愛に関する史料調査・分析」を行う。「異性愛に関する史料調査・分析」については1940年代後半から2000年代を対象に、一般誌および若者雑誌における親密な関係性に関する言説の抽出と分析を行う予定だが、男性同性愛に関する史料と比べると非常に分量が多いため、いくつかの代表的な雑誌を中心的に分析した上で、その他の雑誌は補助的に利用するに留める方針である。 また年度内に学会大会での報告や論文または共著書の執筆などを通じ、現時点での研究成果の発表を行うことを予定している。
|
Causes of Carryover |
研究の進展にともない次年度以降により多くの書籍・史料の購入が必要となる見通しとなったこと、および東京での勉強会開催等で旅費が予定以上に必要となりそうなことから、2016年度は物品費等の使用を制限し、次年度以降に使用することとした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の進捗にともない必要となる書籍・史料の購入、および東京での勉強会開催などで必要となる旅費等として使用する予定である。
|