2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16682
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
佐金 武 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 講師 (40755708)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 哲学的時間論 / 現在主義 / トリビアリティ反論 / 時間の経過 / 時間の空間化 / タイムトラベル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、我々の思考の基本的枠組みをなす時間の概念を多角的に解明することにある。この目的のもと、3年間にわたる研究期間を通じて、すべては現在にある(現在のみが存在する)と主張するいわゆる「現在主義」の立場に基づき、有力な先行研究を踏まえその理論的基礎をさらに明らかにするとともに、関連する様々な応用的問題にも発展しうる広がりのある考察を行うことを試みる。 平成28年度の研究ではとくに、現在主義の十全な定義を与えることを目指した。従来の現在主義の一般的テーゼに対しては、「トリビアリティ反論」と呼ばれる根本的な問題が指摘されている。それによれば、現在主義の存在論はトリビアルに真か、明らかに偽である。そこで本研究では、現在主義を単なる存在論としてではなく、時間に関するダイナミックな理論として捉え直すことにより、この批判を回避することを試みる。まず、この問題に関して研究代表者がすでにこれまで展開した議論を敷衍し、より洗練されたエレガントな理論的枠組みを提供することに努めた。そして、種々の科学理論との両立可能性やタイムトラベルなどの応用的問題も射程に入れつつ、この理論の帰結をより具体的な文脈において明らかにすることを目指した。 その成果は次の通りである。第一に、時間の経過という考え対して提起される一般的批判に応答するため、国際的な学術雑誌において英語論文を発表した。これは平成30年度の研究計画にも関連する大きな成果である。第二に、ダイナミックな時間の理論としての現在主義がタイムトラベルの可能性についてどのような帰結をもつかを明らかにすべく、その研究の成果を「時間の空間化」に関する国内のシンポジウムにおいて発表した。第三に、中立的な立場からさらにタイムトラベルの問題を検討するためSeahwa Kim教授と共同研究を行い、その成果を韓国の学術誌に英語論文として発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
関連する研究発表としては、単著論文1本と共著論文1本(いずれも英語論文)、国内シンポジウムにおける発表1本があり、初年度の研究成果としては十分な結果が得られた。その内容については、平成30年度の予定を先取りする研究成果もあったが、概ね当初の予定どおりである。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究はほぼ予定どおり進んでおり、大幅な見直しは必要ないと思う。今後も当初の研究計画を中核に据え、できる限り追加的な成果も得ることができるよう善処する。
|
-
-
-
[Presentation] タイムトラベルと現在主義2016
Author(s)
佐金 武
Organizer
「現在」という謎:時間の空間化とその批判
Place of Presentation
立正大学 品川キャンパス (東京都品川区)
Year and Date
2016-12-17 – 2016-12-18
Invited