2016 Fiscal Year Research-status Report
『楞伽経』第2章のサンスクリットテキスト校訂ならびに訳注、思想研究
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16K16697
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
堀内 俊郎 東洋大学, 東洋学研究所, 客員研究員 (60600187)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 楞伽経 / サンスクリット写本 / 智吉祥賢 / 智金剛 / 勝義 / 求那跋陀羅 / Lankavatarasutra |
Outline of Annual Research Achievements |
インド中期大乗経典の一つである『楞伽経(ランカーヴァターラスートラ)』の第2章(「三万六千一切法集品」)について、写本に基づくサンスクリットテキストの校訂、ならびに訳注を行うことが、本研究の目的である。また、訳注に際しては、本経に対するチベット語〔訳〕で2つの詳細な注釈(智吉祥賢と智金剛による)とともに、それらの仏教以外の学派の文献や研究動向も視野に入れつつ、当時のインド思想界の中での本経の位置づけを明確にしつつ訳注と思想研究も行うことを目指している。 今年度は所期の計画通り順調に研究を進めることができた。その成果の一端を、2016年11月9日にはドイツ・ハンブルク大学にて行われたKhyentse Center Lecture Seriesにて、The Seven Bhavasvabhavas and Seven Paramarthas in the Lankavatarasutra: Methodological Remarks on the New Edition of Chapter II of the Lankavatarasutraと題する研究発表にて公表した。これは、同章に説かれる「7つの自性」と「7つの勝義」の記述について、10余りのサンスクリット写本間での異同、漢訳3本における異同、後代の2つのチベット語注釈書における異同と解釈の特徴を整理し、文献学的な考察を加えたものである。具体的には、当該箇所に関して、先行するサンスクリット校訂本である南條梵本に対するいくつかの改訂を含んだ校訂テクストを提示することができた。また、「7つの自性」に関しては、最古の漢訳である宋訳が原文に近いが、ただその宋訳もhaplographyを含んでいたであろうことを示し、その原意を探求するなどした。その後、同発表に改訂を加え、『国際哲学研究』(東洋大学国際哲学研究センター)6号、pp. 65-84に、同題名の英語論文として発表した(2017年3月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は、おおむね順調に進展している。初年度であるのでまず当該研究に必要な書籍や電子機器などを適宜揃え、研究環境を早々に整えた。そして、所期の計画通り、『楞伽経』第2章「三万六千一切法集品」のサンスクリットについて、冒頭部分から、唯一の貝葉写本であるT写本などを用いて写本の翻字作業をまず行い、適宜、校訂・訳注・チベット語として残る注釈書2本に基づく思想研究を開始した。 その結果、初年度であるものの着実な研究の進展に基づき、上記の通り英語での研究発表1回、英文論文1本を公表することができたからである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も着実に写本の読解作業を行い、校訂テクストの作成を行う。また、それに基づいた翻訳、訳注研究も適宜継続してゆく予定である。さらに、写本研究や大乗経典研究などといった関連分野も含んだ国内外の最新の研究成果も取り入れてゆく。 その際、定期的に国内外の研究者と読み合わせを行ったり研究会などでの発表を行ったりすることにより、複数の研究者からのフィードバックを得、テクスト校訂や訳注研究に反映させる予定である。
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Research Products
(2 results)