2018 Fiscal Year Research-status Report
『楞伽経』第2章のサンスクリットテキスト校訂ならびに訳注、思想研究
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16K16697
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
堀内 俊郎 東洋大学, 東洋学研究所, 客員研究員 (60600187)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 『楞伽経』 / サンスクリット写本 / 唯識 |
Outline of Annual Research Achievements |
インド中期大乗経典の一つである『楞伽経』の第2章(「三万六千一切法集品」)について、写本に基づくサンスクリットテキストの校訂、ならびに訳注を行うことが、本研究の目的である。また、訳注に際しては、本経に対するチベット語〔訳〕の2つの詳細な注釈(智吉祥賢と智金剛による)とともに、それらの仏教以外の学派の文献や研究動向も視野に入れつつ、当時のインド思想界の中での本経の位置づけを明確にしつつ訳注と思想研究も行うことを目指している。 今年度も引き続き上記の作業を継続した。写本、漢訳、チベット語訳を対照させて作成した資料を他の国内外の研究者と定期的に読み合わせすることによって大きな示唆をうることもできた。 その成果の一旦は、東洋大学で行われた日本印度学仏教学会にて、「『楞伽経』第2章冒頭部再考―テクスト上の問題を中心に― 」と題する発表にて公表した。同経第2章冒頭部で展開される世尊と大慧の対話、いわゆる百八問と百八答は、一読してわかるように、奇妙な対話となっている。大慧の質問に対して世尊は直接的に回答をすることなく、順序を変えて大慧の質問を繰り返しているのみだからである。この対話の意義は従来理解されてこなかったが、『楞伽経』本文、ならびに偈頌品との対応の検討により、その意義を明らかにすることができた。また、写本に基づき、従来のテクストに大幅な修正を加えた形の、当該箇所の校訂梵本も提示することができた。 当該論文は英語論文として刊行される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
着実に研究を進めており1回の学会発表、1本の英語論文の公表をすることはできたものの、予定よりもやや遅れることとなった。大きな理由は二つある。一つ目は、2017年後半から主な研究の拠点が海外に変わったため、環境、資料状況の再整備に時間がとられたため。二つ目は、チベット語訳、漢訳とも対照させる作業を追加して行うこととなったため、時間がとられることとなったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き研究を進めてゆくが、現在までの進捗状況を踏まえたうえでの今後の推進方策としては、第一に、『楞伽経』に関するチベット語〔訳〕の2つの詳細な注釈(智吉祥賢と智金剛による)は膨大であるので参照程度とする。第二に、漢訳、チベット語訳との対照を十分に行う。以上により、本筋のサンスクリット写本に基づく校訂テクストの作成、すなわちテクスト研究に重点を置くこととしたい。
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Causes of Carryover |
2017年後半より海外に研究拠点が移り、また、当初は研究の進展が見込まれたために前倒し請求をしたが、「現在までの進捗状況」に記したように当初の予定より研究が進展しなかったため、その分を全額使用しなかったことが理由である。今後は、研究の進展をできるだけ正確に見積もった上で、図書などの購入、研究発表・研究会のための旅費などに、有効に使用したい。
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Research Products
(2 results)