2019 Fiscal Year Research-status Report
『楞伽経』第2章のサンスクリットテキスト校訂ならびに訳注、思想研究
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16K16697
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
堀内 俊郎 東洋大学, 東洋学研究所, 客員研究員 (60600187)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 『楞伽経』 / サンスクリット写本 / 大乗経典 / 唯識 / 経典解釈 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はサンスクリット写本に基づく『楞伽経』第2章の校訂テクストの作成と、諸注釈にも基づくその思想内容の研究を中心とする。今年度は、計画に沿って写本のトランスクリプションを進めた。その中で、新たに参照せねばならない写本の存在に気づいたため研究はやや遅れているが、後代のいくつかの写本のもととなったある写本の存在を発見することもできた。発表成果としては、1回の学会発表と1本の論文の刊行を行った。学会発表は、従来あまり取り上げられることのなかったジュニャーニャヴァジュラの『楞伽経』注(チベット語としてのみ残る)が、ヴィマラミトラの『般若心経』注におけるディグナーガ批判を引用していることを指摘し、それにも依拠して関連文献であるアティシャの『般若心経』注の訂正案を提示したものである。論文としては、ジュニャーニャヴァジュラの『楞伽経』注の冒頭部分のテクスト校訂と和訳を内容とする論文を一本公表することができた。これは仏典の結集者は誰かという問題や、経典の冒頭句の如是我聞という語に対する詳細な議論を含む箇所であり、これまでまったく注意されてこなかった箇所である。当該箇所について北京版とデルゲ版に基づく校訂を行い、そこで引用されている多くの経論の出典を比定し、議論を明らかにすることができた。すなわち、同論の当該議論はハリバドラの『現観荘厳論』に多く依拠している。同論は密教文献やその注釈文献に言及している。同論は結集者の認識根拠性に対するヴィマラミトラによるディグナーガの批判を再批判しており、ディグナーガを擁護している。また、『楞伽経』の一つの眼目であるところの、言葉による説法の相対性という議論についてのジュニャーニャヴァジュラの見解を明らかにすることができた。以上により、『楞伽経』の注釈に基づく『楞伽経』の思想研究という本研究課題の目的を一部果しえた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究環境と研究状況が変化したため、当初の計画よりは遅れている。前者については主な研究場所が海外となったためである。後者については当初よりも多くのサンスクリット写本を見る必要が出来したためである。しかし着実に本課題に関連するところの『楞伽経』の主な写本のトランスクリプションは終えており、チベット訳の注釈も参照した思想研究も進めており、今年度は具体的に学会発表1回と、1本の論文を発表しえた。
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Strategy for Future Research Activity |
計画に沿って、着実に研究を進めていく予定である。現段階で、チベット訳として残る『楞伽経』の注釈を参照することにより、現存する写本からは得られない読みが得られ、それに基づいて梵本テクストを校訂しうる箇所が存在することを発見した。それを近く論文として発表する予定である。
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Causes of Carryover |
研究環境と研究状況が変化したため、当初の計画よりは遅れている。前者については主な研究場所が海外となったためである。後者については当初よりも多くのサンスクリット写本を見る必要が出来したためである。そのため研究期間を1年延長せざるを得ないこととなった。次年度は最終年度として成果の取りまとめや論文発表を行うために助成金を使用する予定である。
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Research Products
(3 results)