2017 Fiscal Year Research-status Report
近代東アジア仏教交渉と元暁(617-686)表象化
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16K16700
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
孫 知慧 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (90736604)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 仏教 / 元暁 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、海外資料の収集、現地踏査、資料分析に重点的に取り組んだ。(1)初年度につづき資料収集ののち、国家別、主題別、時期別、人物別に目録を作成し、それぞれの資料に対する分析を行った。(2)とりわけ当該年度には、近代以来の韓国社会における元暁宣揚事業、文化コンテンツ化などの様相とその経緯に対する調査をつづけた。元暁を記念する文化館、寺院、公園、遺跡地における現地調査を通じて、元暁像の大衆的拡散と流布の特徴を分析した。その結果の一部として、元暁をテーマとする文学や公演芸術の内容とその様相の変化が、1970年代以来の社会における民主化運動、民衆仏教運動などに結びつけられ、大衆に急速に拡散されたことを確認した。その過程において、元暁をめぐる髑髏水説話、瑤石公主、無碍舞逸話などが、漠然に拡大解釈、曲解された事例も多数見つかった。その時に作り出された元暁をめぐるさまざまなストーリーが、現在までも大衆の元暁認識に少なくない影響を与えていることについて指摘した。(3)近代東アジアにおける学問・思想の交流における元暁理解について考察した。20世紀初における元暁著述の把握と刊行の経緯を検討するにおいて、とりわけ『二障義』『十門和諍論』『大乗起信論疏』などに新たに注目した論考を考察し、これらを踏まえて元暁の二門設定による論理展開に対する論文を発表した。また、東アジアにおける元暁の華厳・唯識に対する認識の差を理解するため、関連分野の専門家から諮問を受けたり関連資料の調査を続けてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度の研究計画のとおりに、韓国の元暁関連遺跡地と文化館、大学図書館などで調査を順調に行った。それに加え、元暁の論理展開の特徴として門の設定、各門による所依経典の配属を考察する作業を続けてきた。その結果をまとめ学会において発表を行った。ただし、初年度につづき、中国側の資料調査が予想のとおりに進めなかったため、この部分の資料の分析はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)平成29年度に引き続き研究に関する現地踏査を行うとともに資料の確保を行う。とりわけ、中国と日本の元暁に関する資料を保管している寺院、大学、機関などを訪れる。(2)西洋学界による近代東アジア仏教と元暁に対する評価を分析し、従来の研究のまとめに反映する。(3)当初の計画どおりに平成30年度の後半期には、研究成果をまとめ著書の執筆に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
研究環境の変化や日程調整の事情により、当該年度に予定していた海外出張の一部と図書購入の実行が難しくなった。また、出張後の報告と領収書の手続きが遅れたために予定金額との誤差が生じており次年度の使用額になってしまった。 平成30年度は、前年度に実行できなかった海外出張、図像資料や書籍の購入、海外資料の翻訳と校勘などに使用する計画である。さらに、研究成果を著書としてまとめるため必要な費用に使用する予定である。
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