2020 Fiscal Year Research-status Report
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16K16701
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
草野 友子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員 (90733402)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 新出土文献 / 故事 / 中国古代思想史 / 国際情報交換 / 中国:台湾:香港 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.新出土文献の研究 本年度は、北京大学蔵秦簡牘(北大秦簡)の一篇である『教女』の研究を中心に行った。中国古代の女性に関する書物の代表作としては、前漢劉向の『列女伝』や後漢班昭(曹大家)の『女誡』等が挙げられるが、それ以前の資料はこれまで見ることができなかった。ところが近年、北京大学が入手した秦代の簡牘の中に、女性向けの教訓書が含まれていた。『教女』と名付けられたその書物は、「善女子之方」と「不善女子之方」について説き、漢代以前の女訓書がいかなるものかについて窺い知ることができる重要な資料である。『教女』の竹簡の写真図版はまだ全て公開されていないが、すでに整理者による釈文と先行研究が発表されており、その全容はおおむね明らかになっている。 そこで、『教女』全体を釈読し、中國藝文研究會の研究会合において「北大秦簡『教女』について」と題した発表を行った後、「北京大學藏秦簡牘『敎女』譯注」として『學林』第70号に発表した。その後、『學林』合評會で指摘を受けた点を修訂し、同じ教説型の女訓書である班昭『女誡』や、『教女』と同巻の北大秦簡『従政之経』といった関連文献と比較しながら、『教女』にみえる中国古代の女性観について考察した。その結果、『教女』は官吏の妻としてどうあるべきかが強調され、その内容は実に具体的であること、そしてそれはある特定の思想や学派の影響が強く見えるものではないことを明らかにした。この成果は、中国出土文献研究会の研究会合において「北大秦簡『教女』からみる中国古代の女性観」と題して発表した。
2.研究書刊行に向けて これまで新出土文献の中の故事・教訓書を中心に研究を進めてきた。具体的には、上海博物館蔵戦国楚竹書(上博楚簡)の中の楚国故事を中心とした「故事」類文献、北大秦簡・漢簡の教訓書等である。その成果をまとめて研究書とするための準備がほぼ整い、来年度内に刊行予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、北大秦簡『教女』の研究成果を発表することができ、また研究書刊行に向けての準備がほぼ整った。ただ、新型コロナウイルスの影響により、海外渡航が不可能となり、中国での学術調査を行うことができなかった。また、本年度は若手研究者を中心とした国際学会を開催する計画であったが、情勢が予測できず、準備が整わなかったことにより、延期せざるをえなくなったことが反省点である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、新出土文献の「故事」に関わる文献を中心に検討を進める。新たに公開された資料の中に関連文献が含まれていた場合は、それも研究対象とする。研究成果は、国内外の学術雑誌や学会・研究会等で随時発表したい。研究書の刊行も、来年度内に実現させる予定である。 また、新型コロナウイルスの影響により延期となった国際学会について、オンラインでの開催も視野に入れながら、次年度こそは実現させたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、中国での学術調査や国内出張等を取りやめにしたこと、また若手研究者を中心とした国際学会の開催を延期したことにより、次年度使用額が生じた。その分は、次年度に計画している国際学会開催および研究書刊行に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)