2018 Fiscal Year Annual Research Report
Quantification of Nature in the Scientific Thoughts during the Period from the Late Ming Dynasty to the Early Qing Dynasty
Project/Area Number |
16K16710
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
田中 有紀 立正大学, 経済学部, 准教授 (10632680)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 朱載イク / 江永 / 十二平均律 / 八線表 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、江永(1681―1762)の天文学に関する文献の分析を継続して行った。とりわけ『河洛精蘊』や『数学』などに見える八線表(三角関数表)や地円説に関する分析を通し、江永が西洋科学や中国の伝統天文学とどのように向き合ったのかを考察した。『数学』は梅文鼎(1633-1721)の暦学に依拠し著述されたものである。西洋科学の優位が盛んに論じられる傾向に警鐘を鳴らし、中国伝統科学の中にも西洋科学と同様の理論が存在した(西学中源説)と唱えた梅文鼎に対し、江永は西洋科学こそが聖人の意図を明らかにしたと考え、八線表を作り地円説を詳細に論じた西洋人の努力を高く評価した。その一方、江永は『河図』『洛書』やその他の古典に依拠しながら、黄金比や地円というアイディア自体は中国の聖人はすでに知っていたと考えた。つまり彼は「西学中源」的な発想も有しているのである。報告者は江永のこの二つの態度(「西学中源」的発想と西洋科学への高い評価)を分析する中で、この時期に、「知」のあり方に対する新しい態度が生じたのではないかと考えた。以上の研究については、「江永的礼学与科学」として「礼学与中国伝統文化国際学術研討会」(武漢大学、2018年11月)にて報告し、現在論文を執筆中である。 その他に、2018年9月に出版した『中国の音楽思想:朱載イクと十二平均律』(東京大学出版会)では、明末清初における音律学の発展と受容を論じ、象数易と結びつけられた十二平均律がどのような結果を迎えたかについて最終的な結論を出した。十二平均律という事象自体が、理論的・数学的性格が強く、明末、象数易理論と深く関連付けられた中で生み出されたものの技術として応用され普遍的に受容されなかった理由は、技術が理論よりも優位に立てなかったからだと考えた。 このほか、複数の学会で、音律学や天文学について発表する中で、象数易理論との関連を指摘した。
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