2019 Fiscal Year Annual Research Report
Christian Women in the non-Western Contexts and Eco-justice: Focusing on the Cases in Latin America and Asia
Project/Area Number |
16K16712
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
藤原 佐和子 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (20735295)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 思想史 / キリスト教 / ジェンダー / 環境倫理 / エキュメニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、回勅「ラウダート・シ」の発布(2015年)を契機として、非欧米の女性キリスト者たちによる環境倫理への貢献についての新たな知見の獲得を目的とする。以下に、最終年度の主な研究実績を3点挙げる。 第1に、2015年のアジア・キリスト教協議会(CCA)総会に際し、フェミニスト神学者が「気候変動と環境正義(eco-justice)」を主題化した点に注目し、環境倫理学、環境運動論、キリスト教倫理学における類似概念の整理を行い、特にエキュメニカル運動が追求する「社会正義」を拡充するものとしての「環境正義」について考察した。 第2に、2019年に「環境保護方針」を採択し、初めての女性総会(台湾)を開催したCCAで主題化された「被造世界の修復」(restore the Creation)に特に注目する参与観察を実施し、アジアの女性キリスト者たちの信仰と環境正義のつながりがかつてなく可視化されている点を確認することができた。 第3に、同回勅を、非欧米のエコフェミニスト神学者たちがどのように評価しているかについて、エコフェミニズムの最新動向と照らし合わせながら検討し、女性たちの具体的現実を反映されていないなどの主要な批判について詳細に検討した。また、2015年の重要文書(パリ協定、国連SDGs、特にAAAA)で、気候的正義の取り組みとジェンダー公正が不可分とされている点の重要性を確認した。 同回勅が非欧米の女性キリスト者たちにもたらした影響は大きく、環境意識の高まりの可視化、建設的な批判はその表れであると考えられる。最終年度の研究を通して、気候的危機に際してますます明らかとなっている人間共同体の破れの識別が、自らの教会の権威と伝統に対する果敢かつ大胆な分析、キリスト教の男性中心的、ヨーロッパ中心的、さらには異性愛主義的側面に対する根本的な問い直しに結びついている点が明らかになった。
|