2016 Fiscal Year Research-status Report
Musicus・Musikantの概念を用いた近代ドイツ音楽教授史の総合的な研究
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16K16713
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
小野 亮祐 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (10611189)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Musikunterricht音楽教授 / Musikant / Musicus / Organistオルガン奏者 / Cantor (Kantor)カントール / Kirchenmusuik教会音楽 / Schulmusik学校音楽 / Gelehrter 学識者 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は主にMusicus型のいわゆる学識ある音楽家に関連した文献の精読や資料の収集を行うこととしていた。 まず、Musicus型の音楽家を養成する教本、つまり単なる技術の向上だけではなく幅広い音楽の知識について取り扱う文献、またこのタイプの典型であるカントール、オルガニストなどを養成するための教本などの文献を現地収集・購入した。また、Musicus型の音楽家の背景を知るために、計画当初は一般教育史や音楽教育史の二次文献を精読することとしていた。しかし、彼らの多くが大学や大学に類するような学歴を有する人物であったことから、西洋におけるいわゆる「学識の歴史」についての二次文献を購入・精読することで、彼らがどのような歴史的背景を持っているのかを整理することができた。このことにより単なる教育史や音楽史のなかではなく、更に広く学識者の歴史的文脈に位置づけることが可能になったと考える。これについては29年度中に得られた知見を整理し紀要等に投稿する予定である。 また、ドイツでの現地調査では当初は29年度に行うこととしていたMusicus型の音楽家の現地調査を行った。具体的にはザクセン地域を中心としたオルガニストとカントールの遺産目録に含まれる蔵書目録や蔵書楽譜目録を調査することができた。現在これらの資料については膨大であるため現在も精査中であるが、当時のMusicus型の音楽家であるオルガニストやカントールがどのような学識を持っていたのか、また先述の学識者の歴史からレビューしたときに、彼らを学識者の概念の下で如何に捉えられ得るのかを明確にできる可能性が出てきた。つまり、従来の音楽学では「音楽家」としての一側面からのみしか扱ってこなかったものを、別の視点からとらえることで新たなに包括的な彼らの音楽家像が構築できると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
若干予定を変更したため、ドイツの一般教育史や音楽教育史の文献の精読に遅れが出ているものの、それ以外の点では29年度の調査を先取りするなどしており、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の遅れを取っている部分について早急に着手し、29年度に予定していたMusicus型の音楽教本の整理とデータベース化、普通教育における音楽教育についてのとりまとめ、教会音楽家のキャリアについての一次資料の収集を進めて、Musicus型の音楽家の歴史を取りまとめられるように進めてゆきたい。
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Causes of Carryover |
人件費謝金が生じなかったことと、国内での学会で発表する機会が大学業務の都合により得られなかったことなどによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外現地調査にかかる旅費が若干高騰していることから、そちらに充てて使用し、それでも余る場合は二次文献の購入費用に充てたいと考えている。
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Remarks |
これらのWeb連載は2014年から継続されているものであるが、今年度の第11~13回の3回分については、本科研の研究の一部が反映されている。なお、この記事は安田寛奈良教育大学名誉教授との共著連載である。
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Research Products
(3 results)