2019 Fiscal Year Research-status Report
Musicus・Musikantの概念を用いた近代ドイツ音楽教授史の総合的な研究
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16K16713
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
小野 亮祐 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (10611189)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 音楽教授 / 教員養成所 / 音楽院 / ドイツ / おもちゃの交響曲 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はドイツの音楽院の現地調査と、従来の収集データの分析、およびそれらに基づいた研究結果の公表を進めた。3年目までの調査を踏まえ、本研究テーマのMusicus的な音楽教授の分析はプロイセンとザクセン地域の教員養成所(Lehrerseminar)での音楽教育、ライプツィヒ、シュトゥットガルト、ミュンヘンの各音楽院のオルガン教育、ザクセン地域の教会音楽家・教師の採用の資料に絞られた。一方Musikant的ありようについては、調査を進めることによって、いくつかの特定の宮廷楽団と町楽師の資料に絞られた。 本年はMusicus的な面の音楽院についての研究公表を行い、1843年創立のライプツィヒ音楽院の19世紀の学生の証明書と学籍簿、および卒業試験の試験科目を手がかりに考察・研究公表を行った。その結果、当音楽院でオルガンを学んだ学生は、J.S.バッハや同時代のライプツィヒのオルガニストの楽曲を中心にきわめてローカルなレパートリーで学んでいたが、礼拝でとりわけ必要になるコラールをベースにした楽曲(コラール前奏曲など)ではなく、前奏曲とフーガなどの自由曲寄りの曲種が主要レパートリーとなっていた。また学生は卒業後にオルガニストよりも指揮者等のカペルマシター的な職に就いた者が多く、また入学前は教員養成所の卒業生や学校教師をいったん経て入学し前述のような職に就いた者が一定程度いた。しかし、旧来型の、卒業後に学校教師とオルガニストを兼ねる者はいなかった。これらの点ではまだ18世紀以前のありようを引き継ぎつつも、音楽院のオルガン教育が明らかにオルガン演奏に特化されつつあることが示唆された。 また、昨年度に研究発表を行った、派生的な研究成果である「おもちゃの交響曲」について、さらに調査を補完し論文としてまとめることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
資料の分析(手書き史料の解読)に時間がかかっており、論文などのアウトプットが当初の予定通り達成できていないから。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は2019年度に絞り込んだ考察対象をもとに収集した資料の分析に全力を挙げ、前述の通り音楽院、教員養成所の資料、教会音楽家・教師の採用資料の分析からMusicus的音楽教授のありようを明らかにし、宮廷楽団と町楽師の資料からはMusikant的な音楽教授のありようを研究公表してゆく。特に、教員養成所については、ある程度資料の解読を進め掲載が内定している研究公表もあるので、それらの執筆を行ってゆくことにしたい。
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Research Products
(2 results)