2021 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive Study of the History of Modern German Music-Teaching using the concept of Musicus / Musikant
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16K16713
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
小野 亮祐 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (10611189)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ドイツ / 教員養成所(Lehrerserminar)) / ダルムシュタット(Darmstadt) / 宮廷楽団 / カントル / オルガニスト / 19世紀 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も引き続き、新型コロナウィルス感染症の影響により公刊等が遅れていた研究成果の発表年(研究成果公開のための延長年)としていた。以下の2点の成果(論文1本、口頭発表1本)である。 1つは編集が学会の記念誌への投稿論文である。この論文では、19世紀ドイツの教員養成所における音楽教育と、当時の教員養成と音楽能力の関係、養成所卒業後の音楽的キャリア、教員採用試験での音楽試験について、当時の記録をもとに明らかにした。18世紀までの仕組みでは、いわゆるラテン語学校や大学教育などの中で、付随的な形で教師やそれに伴って必要な音楽技能が育成されていたが、学校制度が近代化され教員養成所が整備されるとともに、いわゆる学校で音楽に関わるカントルやオルガニストは学校制度の中で養成されるようになっていった様相が明らかにできた。また以前から明らかにしつつあった教員養成所での音楽の授業は、採用試験で試される高度な音楽能力に一致していたことが分かった。 2点目は口頭発表(コロナの影響で実際は紙上発表に変更)である。そこでは19世紀初頭のダルムシュタット宮廷楽団における音楽教育に関する資料の全体像と、教師・弟子の名前、レッスンされた楽器、謝金額等の国庫からの支出、加えて技能以外の理論的なゲスト講師による講義が行われていたことを明らかにした。技能教育が単に徒弟制的な内部の慣習として行われていただけなく、国庫からの授業料支出がなされていたことが分かった。 前者の音楽教員の養成が教員養成制度に取り込まれた点は、いわゆる学識を背景にしたMusicus的な音楽教員の19世紀の学校の近代化・制度化の帰結であるとすれば、後者はいわゆるMusikant的な伝統的な徒弟制度的な様相が、19世紀において国家の制度の中に受け継がれた帰結の一つの具体例であるといえる。
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Research Products
(2 results)