2016 Fiscal Year Research-status Report
「惑星という庭」の美学的含意――ジル・クレマン影響作用史の確立
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16K16719
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
山内 朋樹 京都教育大学, 教育学部, 講師 (10769318)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ジル・クレマン / ホベルト・ブルレ・マルクス / 動いている庭 / 惑星という庭 / 庭園 / ランドスケープ |
Outline of Annual Research Achievements |
ジル・クレマンの「惑星という庭」の主張を明確化するため、初年度はこの概念を主題とした一次文献の読解と、他の二次文献の収集を中心に研究を進めた。具体的に読解と分析を進めた文献は、クレマンの著書である『トマと旅人』(1997)、『惑星という庭』(1999-a)、『惑星という庭』(1999-b) 。同時並行して収集した二次文献はクレマンの庭園理論の理解に必要となる人類学や美学等の基礎文献。 先行研究ですでに示したように、クレマンは「動いている庭」が複数のアクター(来園者、植物、動物、庭師等)の相互干渉によって成立することを非常に重視している。本研究では、この読解を「惑星という庭」にも強く読み込むことで、一般的に自然保護論の象徴として人口に膾炙してきたこの概念を理論化することが狙いだが、上記3つの文献中においても、クレマンのこの基本的発想を改めて確認することができている。この読解を推し進めることで、これまでバリドンやラシーヌによって追認されてきた自然保護論としての「惑星という庭」概念の理解は非常に偏ったものだったことが明らかとなるだろう。 クレマンの庭園理論を具体的な諸アクター連関から捉え直すことは、クレマン自身も関わりの深い近年の人類学や美学の動向とも呼応しており、次年度以降も引き続き「惑星という庭」が初めて提案された『トマと旅人』や、庭師を複数のアクターのなかの「特権的アクター」として提示した『惑星という庭』(a)を中心に分析を継続していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は当初予定していた海外での調査を見送ることになったため、「惑星という庭」展の資料収集と再構成については計画から遅れがある。しかしながら海外調査は今年度予定しており、主要文献の分析、およびブルレ・マルクスの資料収集は着実に進展しているため、大きな遅れはないと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
二年目は初年度同様クレマンの重要文献の分析を続けるとともに、フランスでの資料収集をおこなう。並行して、この研究の中心的課題のひとつであるブルレ・マルクスの研究に着手する。具体的にはクレマンがブルレ・マルクスに言及しているテクスト(カヴァルカンティ他編『ホベルト・ブルレ・マルクス』(2011)に所収およびクレマン『惑星という庭』(1999-a))の分析を進める。
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Causes of Carryover |
当該年度より現在の大学に赴任することとなり、予定が読めない部分が多かったため、夏季あるいは春季に予定していたフランスでの海外調査を次年度に繰越すことにしたことが、次年度使用額が発生した理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度には海外調査を予定しているので十分に消化できる。
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