2016 Fiscal Year Research-status Report
国際的文脈における戦後イタリア美術と文化的葛藤――芸術・産業・メディア
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16K16721
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Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
池野 絢子 京都造形芸術大学, 芸術学部, 准教授 (80748393)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 戦後イタリア美術 / アルテ・ポーヴェラ / アルテ・プログランマータ / ポップ・アート |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画にしたがって初年度に行なった研究は、概して以下の三点である。 1.1960年代の芸術に関する資料読解。本年度はとくに、1960年代という時代の位置付けを通時的に理解するための基礎作業として、第二次世界対戦後のイタリア芸術の推移と、それに伴う主要な批評言説について二次文献を参照しながら整理・解読を行った。それにより、60年代の芸術において、新たな素材や視覚経験をめぐる問題が重要性を帯びていった過程を確認することができた。その研究成果は、分担執筆の論考にまとめている。 2.同時期の芸術動向に関する調査。上記の研究の過程で、とくにアルテ・プログランマータのような芸術とテクノロジーを融合させる動向がどのような歴史的経緯の上で登場したのかを調査する必要が生じ、関連資料を収集・読解した。その過程で、当時その動向を支持したウンベルト・エーコに対して、それが北部の商業主義を助長するものだといった批判があったことなどがわかった。また、芸術実践としてみたとき、この動向の一つの起源としてとくにルーチョ・フォンターナは重要であり、今後調査を進めたい。 3.イタリア現地での作品調査。アルテ・プログランマータのようなキネティック・アートは、作品が電気で動く点が重要であるため、複製図版で作品の実態を理解することは難しい。したがって本年度は、ミラノを中心にこれらの作品を所蔵する複数の美術館を訪問し、作品について現地調査を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献の収集と整理、読解といった基礎的な作業は概ね順調に進行している。ただし、1960年代のイタリア芸術の全体像を捉えるためには、まだ批評言説の読み込みが足らない。三年間で一定の成果を得るためにも、より広い範囲の資料を収集・読解していく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本年度までの研究を踏まえて、アルテ・プログランマータを中心とした60年代イタリアのキネティック・アートに関して研究を進めつつ、イタリアにおけるポップ・アートの受容と普及の実態を調査する。ただし、すべてを網羅的に行うことは難しいので、芸術家ではマリオ・スキーファノ、ミンモ・ロテッラら、批評家ではアルベルト・ボアットの言説にとくに注目することで、全体像の把握に努める。
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