2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K16722
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Research Institution | The International University of Kagoshima |
Principal Investigator |
伊藤 綾 鹿児島国際大学, 国際文化学部, 准教授 (50767043)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マックス・レーガー / 歌曲 / 音楽のユーモア / 歌曲の統辞論的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、レーガー作品全般における特徴とされている「ユーモア」が、具体的にどのような方法で歌曲に現れているのかを、クリスティアン・モルゲンシュテルンの詩をテクストとして用いている歌曲全8作品の分析を通して明らかにすることを試みた。その結果、〈追懐の旋律に〉(作品51-8)から①音楽要素のみによる「グロテスクな」ユーモア、〈上品な契約〉(作品62-16)から②韻律と拍節の関係を通してのユーモアというふたつの特筆すべき作曲法が明らかとなった。とりわけ①は、テクストにユーモアが無くても音楽にユーモアを持たせている点が注目に値する。また、レーガー歌曲の録音資料制作も実績としてあげたい。①の曲は1945年の録音が一つのみ、②の曲は録音が存在しないため、勤務校の学生と協力しこの2曲の録音を行なった。②のそれは世界で初めての録音資料となった。 【具体的な活動の記録】2016年8月19~30日:ドイツのマックス・レーガー研究所へ赴き、レーガーの歌曲とユーモアに関する資料収集および研究所所長や職員との意見交換を行った。10月6日:鹿児島国際大学大学院国際文化研究科 第4回公開研究会「芸術における『表現』」にて研究発表「マックス・レーガーにみるユーモアの表現」を行うとともにレーガー歌曲のコンサートを企画。コンサートでは、勤務校の大学院生8名に1曲ずつ計8曲のレーガー歌曲の独唱を依頼。なお、研究発表内容は、公開研究会報告書として製本し、2017年3月に発行。2016年11月12日:日本音楽学会第67回全国大会にて研究発表。発表タイトルは「マックス・レーガーの歌曲における諧謔性」。この研究発表の一部は、『鹿児島国際大学国際文化学部論集』第17巻、第4号に掲載。タイトル「マックス・レーガー歌曲の統辞論的研究――韻律と拍節の関係にみるユーモア――」(p. 245-252)、2017年3月発行。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度に予定していたモルゲンシュテルンの詩をテクストとする作品全8曲を分析し、そのうち2曲から特筆すべき特徴を見つけることができた。また、その成果について、研究会や学会で発表し、研究報告書および論文を書き上げた。加えて、研究会に付随して企画したコンサートを通じて、レーガー歌曲の魅力を一般にも広く紹介することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
【楽曲分析】①2017年度も引き続き、レーガーの歌曲におけるユーモアを研究の重要なテーマとし、モルゲンシュテルンと同様に、レーガーと同時代の詩人たちのテクストに作曲した作品を中心に、楽曲分析を進めていく。その際は、2016年の研究から明らかになったふたつの手法を下敷きにし、さらなる特徴的な手法も明らかにしていきたい。②「レーガーらしさ」をより明確化するために、レーガーが用いたテクストと同じものに、他の作曲家が曲をつけた作品も比較対象として見ていきたい。③「レーガー独自の韻律の処理方法」を明らかにするために、ヨーゼフ・フッゲンベルガーのテクスト「Friede 平穏」にレーガーが作曲した2作品(作品76-25と79c-2)における韻律と拍節の関係を比較分析する。なお、①~③の分析結果は論文としてまとめるとともに、特筆すべきものは学会で発表する予定である。 【資料収集および情報交換】9月にレーガー研究所を訪れ、自筆譜を見ながら特徴的な作曲手法を明らかにするとともに、前年度の研究結果報告を行い、研究員達と意見交換を行う。 【社会活動】これまでの研究成果を含め、レーガーに関する企画展『マックス・レーガーとユーモア(仮題)』を、7月に勤務校の博物館で行う。企画展のパネル作りや、企画展と合同開催予定のコンサートには学生も参加することにより、レーガーの認知度を高めていく。また、11月にはレーガーのユーモアに関する講演を、東京で行う予定である。
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Causes of Carryover |
【謝金】英文での論文あるいは発表が無かったため、校正費が発生しなかったことと、【物品費】購入予定のレーガー全集の発売が遅れており購入できなかったことが、次年度使用額が生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
【謝金】英文論文の校正および展覧会と同時に開催する演奏会の出演者謝礼に当てる。【物品費】レーガー全集購入の資金の一部に当てる。
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