2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K16722
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Research Institution | The International University of Kagoshima |
Principal Investigator |
小田 綾 (伊藤) 鹿児島国際大学, 国際文化学部, 准教授 (50767043)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マックス・レーガー / ドイツ歌曲 / レーガー展 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の予定通り、レーガーが同一の詩に2度作曲した唯一の作品である作品79c-4と作品76-25を比較分析した。その結果、1901年版にはフレーズ末に一貫して同一の音高線の操作が見られ、1905年版では第1詩節の第1~3詩行で用いた7つのリズムモティーフをそれ以降のテクストに対しても様々な組み合わせで用いていることが明らかとなった。以上のことから、レーガーはふたつの「Friede」において、それぞれの核となる音楽要素は異なるものの、共に「ひとつのモティーフとそのヴァリエーションで歌唱声部を構成する手法」を用いていると言える。前年度分析した〈上品な契約〉(作品62-16)にもこの手法が見られたことから、この手法はこれらの3曲を作曲した「ミュンヘン時代(1901-1910年)」特有のレーガーの作風であると推測できる。 【具体的な活動の記録】2017年7月16日:勤務校のオープンキャンパスにてレーガー歌曲のミニコンサートを開催。レーガーの独唱曲と重唱曲計7曲を大学院生が演奏。7月16日~9月29日:鹿児島国際大学ミュージアムとの合同企画として『孤高の作曲家マックス・レーガーとユーモア展』を開催。アクティヴラーニングの一環として、展示パネルの作成には学部生を関わらせた。8月31~9月7日:ドイツのマックス・レーガー研究所へ赴き、前年度の研究成果やアジア初のレーガー展の報告、職員との意見交換、本研究に関する資料の収集を行った。10月29日:日本音楽学会第68回全国大会にて研究発表。タイトルは「マックス・レーガー歌曲の統辞論的研究ーふたつの《Friede》op.79c-4とop.76-25の比較分析を通してー」。この研究内容については現在論文を執筆中。11月18日:モーツァルティアン・フェラインの例会において招待講演。タイトルは「W.A.モーツァルトとM.レーガーにみるユーモアの共通性」。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フッゲンベルガーのテクストに対するふたつの歌曲を比較分析することにより、共通点と相違点を明らかにすることができただけでなく、前年度の研究成果とも関連する「ひとつのモティーフとそのヴァリエーションで歌唱声部を構成する手法」を明らかにし、学会で発表することができた。 また、アジアで初めてのレーガー展の開催、レーガー歌曲のミニコンサート、レーガー作品に関する招待講演を通し、レーガーや彼の作品について広く一般にも紹介することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
【研究発表】平成29年度の研究成果を英文論文で発表する 【楽曲分析】応募の時点では平成30年度はレーガー歌曲全曲の分析を網羅的に行う予定であった。しかし、今年度までの分析の結果、ミュンヘン時代(1901-1910年)の作品には「ひとつのモティーフとそのヴァリエーションで歌唱声部を構成する手法」という大きな特徴があることがわかってきたため、今後の研究ではまずはミュンヘン時代の作品に的を絞り分析し、この時代の作品におけるこの手法の占める割合について明らかにしたい。それを通し、この手法の先駆者であるヨハネス・ブラームスからレーガーが受けた影響を具体的に明らかにできると同時に、「レーガーらしさ」も明らかにすることができるだろう。 なお、7月10日~3月31日まで産休・育休に入るため、今年度は夏季休業中にレーガー研究所を訪れ資料を収集することはできない。また、社会活動として毎年計画していた『レーガー歌曲レクチャーコンサート』も開催できない。これらについては、来年度行うこととする。
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Causes of Carryover |
(理由) 【謝金】英文での論文が今年度中に書き終わらなかったため、校正費が発生しなかった。 (使用計画) 【謝金】現在英文論文を執筆中であり、その校正費に13,471円を当てる。
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