2019 Fiscal Year Annual Research Report
A Study on the Motif of Landscape Painter: the Process of Development of Landscape Painting in Early Modern Europe
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16K16723
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
金沢 文緒 岩手大学, 教育学部, 准教授 (80606997)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 風景画 / 自己表象 / 戸外制作 / 風景画家 / 近世ヨーロッパ / 自画像 |
Outline of Annual Research Achievements |
近世ヨーロッパでは風景画が独立した絵画ジャンルとして確立したが、伝統的な美術理論に基づいた美術ヒエラルキーにおいて、風景画とその制作者である風景画家は低評価に甘んじていた。近世における風景画の展開には、当時のこうした社会的状況、すなわち、風景画家が画家として抱えていたジレンマが大きく関与していたと考えられる。本研究は、体系的な研究が未だになされていない、風景画の画中に制作途中の姿で描かれる「風景画家」の絵画モチーフに注目し、従来の研究では看過されてきた風景画家の自己表象、画家としての自意識の問題について考察し、これを通して近世ヨーロッパにおける風景画の成立と発展の過程を再考する。 本年度は、絵画モチーフが挿入された風景に注目し、近世ヨーロッパの風景画家が実際戸外で制作した素描について実際に制作された場所との関連で調査を進めた。 また、昨年度に引き続き、画中画としての風景画を自画像の一部に挿入する作例の発見・調査を実施した。こうしたモチーフの登場と、制作途中の風景画家のモチーフの発展の間に関連性がないか、当時の社会背景を含めて考察した。 さらに、「風景画家」の絵画モチーフを自己表象として自覚的に導入し、その後このモチーフによらない本格的な自画像制作へと進んだ景観画家ベルナルド・ベロットの活動に注目し、背景にある彼の画家としての社会的ジレンマがどのように作品に表出したのかを分析した。その際、自画像と時期的に制作され、制作方針がきわめて密接な関連性を持つ、専門外の絵画ジャンルに取り組んだ具体的作例を取り上げ、画家の作品戦略の観点から考察した。
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