2016 Fiscal Year Research-status Report
ハプスブルク家の霊廟と墓碑――ゴシックからルネサンスへの変遷
Project/Area Number |
16K16725
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
岩谷 秋美 東京藝術大学, 美術学部, 助手 (10735541)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 彫刻史 / 建築史 / フリードリヒ三世 / マクシミリアン一世 / 葬礼美術 / ゴシック大聖堂 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ウィーンのシュテファン大聖堂に納められたハプスブルク家の皇帝フリードリヒ三世の墓碑の政治的機能を検討することで、ゴシックからルネサンス期における墓碑と霊廟の機能や役割について再解釈を試みるものである。考察に際しては、息子である皇帝マクシミリアン一世の墓碑プロジェクトを手掛かりとする。 平成28年度は、マクシミリアン一世の墓碑について研究を進め、夏には長期の現地調査を行った。まずインスブルックの宮廷礼拝堂にて、総計28体の等身大超のブロンズ像、およびマクシミリアン一世の跪拝像と棺を飾るレリーフの詳細な調査を実施した。あわせてアンブラス城にて皇帝の胸像など関連作品を調べるとともに、チロル地方の諸聖堂および城砦礼拝堂において、彫刻や壁画プログラム等の状況を把握した。 秋には、ウィーンで開催されたシュテファン大聖堂に関する国際シンポジウム(3日間)に参加し、最新の研究動向に触れるとともに、現地の専門家たちとのディスカッションの機会を得た。この際、修復時の外壁調査結果からクロノロジーに変更を加えるという新知見を知ることができたが、これは本調査研究にとって極めて重要な情報であった。 また、マクシミリアン一世の長女で、ネーデルラント総督を務めたマルガレーテ・フォン・エスターライヒ(マルグリット・ドートリッシュ)の霊廟(フランス、ブール=ガン=ブレス近郊、ブロウ修道院)の調査を実施し、墓碑と聖堂建築の空間的関係性に関する考察を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、マクシミリアン一世の墓碑プロジェクトについて、写真や文献資料など、必要な情報を収集することができた。またその成果として、マクシミリアン一世の芸術施策についての論文と、ウィーンのシュテファン大聖堂に関する論文等をまとめ、また聖堂空間に関する発表の機会を得ることができた。 ただしフランスに関しては、予定していたマリー・ド・ブルゴーニュではなく、マルガレーテの墓碑調査を重点的に行うという計画変更があった。これは、後者の方が資料が少なく、早期に研究を始める必要があると判断したためである。前者については、来年度以降、研究を進めてゆきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、フリードリヒ三世の墓碑研究を進めるとともに、比較対象をフランスやボヘミアへも広げ、調査を実施し、その成果を論文にまとめる予定である。特に平成29年度には長期の調査旅行を行うことで、作品研究と資料収集を進めたい。
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Research Products
(6 results)