2017 Fiscal Year Research-status Report
ハプスブルク家の霊廟と墓碑――ゴシックからルネサンスへの変遷
Project/Area Number |
16K16725
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
岩谷 秋美 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 専門研究員 (10735541)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ゴシック / ルネサンス / 墓碑 / ハプスブルク / 皇帝フリードリヒ三世 / 皇帝マクシミリアン一世 / 彫刻 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ウィーンのシュテファン大聖堂に設置されたハプスブルク家の皇帝フリードリヒ三世(1415-1493)の墓碑について、その政治的機能を検討することで、ゴシックからルネサンス期における墓碑と霊廟の機能や役割に関する再解釈を試みるものである。考察に際しては、息子である皇帝マクシミリアン一世の墓碑プロジェクトを手掛かりとする。 平成29年度は、第一に、フリードリヒ三世墓碑を構成する個別モティーフの分析を行った。フリードリヒ三世の墓碑は、全体のサイズが619 x 458 cm、棺蓋だけでも長辺が3メートルにおよぶという大規模なものである。その小柱やアーケード、壁龕内には聖人や聖職者、君主などの肖像が総計200点ほど観察され、墓碑制作の目的や意図を解明する上で重要な手掛かりとなる。その中でも、本年度は、コーニス上に座す小像に注目し、その図像的位置づけや系譜について、墓碑の伝統を踏まえつつ考察した。 第二に、ハプスブルク家と密接な関りをもつ同時代の墓碑調査を行った。主な対象としては、ドイツ後期ゴシックに影響力をもったルクセンブルク家、および、北方ルネサンスの彫刻に多大な影響を与えたブルゴーニュ公一族の墓碑である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、オーストリア・チェコ・ベルギー等にて、ハプスブルク家の墓碑や霊廟に関する写真や文献資料など、必要な情報を収集することができた。リードリヒ三世墓碑の人物モティーフの図像と系譜等に関する考察の成果は、論文として発表した。また、前年度に計画を変更して考察を延期していたマリー・ド・ブルゴーニュらブルゴーニュ公関係の墓碑に関しての考察を本年度に進めることができた。その成果については平成30年度に論文としてまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでで、基本的な調査と資料収集を終えた。そこで今後は、皇帝フリードリヒ三世と息子の皇帝マクシミリアン一世、双方の視点から墓碑を再検してゆきたい。具体的な考察点としては、第一に、霊廟および墓碑の設置場所が選定された理由である。第二に、建築や付属彫刻を含めた霊廟全体のプログラムの中における墓碑の役割を検討する。第三に、ブルゴーニュ、ベルギー、ボヘミアなど、西欧における霊廟および墓碑の伝統中に本作品を位置付け、その意義や目的を考察したい。 あわせて夏季に長期の調査旅行を行い、資料を収集するとともに、現地での作品調査を実施する。
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Causes of Carryover |
2018年3月に実施した調査出張からの帰国日が、4月2日(すなわち平成30年度)となったため。
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Research Products
(3 results)