2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16726
|
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
土谷 真紀 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (80757451)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 狩野派 / 絵巻 / 法師物語絵巻 / 鞍馬蓋寺縁起絵巻 / 狩野元信 / 武蔵坊縁起 / 涅槃図 / 土佐行広 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、作品調査を継続しつつ、研究成果に関する口頭発表と論文公表を進めた。調査作例は、①室町後期から江戸初期の制作が想定される絵巻:「金山天王寺縁起絵巻」(茨城、大覚寺蔵)、「大江山絵巻」「武蔵坊縁起絵巻」(いずれもアイルランド、チェスター・ビーティー・ライブラリー蔵)、②土佐行広に関連する作例:「仏涅槃図」(愛知県知多市、法海寺蔵)、③鞍馬寺の縁起を主題とする近世の模本:「鞍馬蓋寺縁起絵巻模本」(個人蔵)、「鞍馬寺縁起絵模本」(広島、海の見える杜美術館蔵)である。 ①「金山天王寺縁起絵巻」(茨城・大覚寺蔵)は、実見により室町後期のやまと絵系の画風を持つこと、聖徳太子の説話を中心に構成されていることを確認した。「武蔵坊縁起絵巻」については、頭脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進プログラムによる研究発表会(於アイルランド、2019年3月7日)において、米国・ハーバード大学フォッグ美術館に所蔵される作例と一具である可能性を指摘した。 ②愛知県知多市・法海寺蔵本は、15世紀前半に活躍した土佐行広による「仏涅槃図」(1451年作、京都・興聖寺蔵)と細部表現が共通することを確認した。この知見を踏まえつつ、「法師物語絵巻」についての画風、説話の傾向、制作の場について検討した論文「「法師物語絵巻」について」(『國華』第1478号 2018年12月)を発表した。 ③個人蔵の「鞍馬蓋寺縁起絵巻模本」はこれまで未紹介の作例で、江戸後期に作られた全段の詞書と絵を完備した模本であることが判明した。詳細については、「新出の個人蔵「鞍馬蓋寺縁起絵巻」模本」(『人文』第17巻、学習院大学人文科学研究所、2019年3月)に掲載し、基礎的な考察を行った。 また、初期狩野派が手がけた絵巻に関する単著『初期狩野派絵巻の研究』(青簡舎、2019年3月)を刊行し、その中で本研究の成果にも言及した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画で挙げていた作品のなかに修理のため実見が難しいものがあるため。また、研究を進める過程で、当初の調査予定とは異なる作品についての分析を行っているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
作品調査の迅速な実施とともに、成果に関する発表と論文化を進める。
|
Causes of Carryover |
物品費において軽微な誤差が生じたため。2019年度の物品費として計上する。
|