2017 Fiscal Year Research-status Report
文徴明研究―文人画家としての系譜意識の形成と確立について
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16K16730
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Research Institution | The Museum Yamato Bunkakan |
Principal Investigator |
都甲 さやか 公益財団法人大和文華館, その他部局等, 学芸部員 (80706755)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 美術史 / 東洋史 / 文人画 / 蘇州 / 文徴明 / 沈周 / 中国絵画史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、東洋美術史上重要な文人画家である文徴明(1470~1559)の作画活動における古画学習の実態を精査することで、古画学習が彼の画業において重要な意味を持ち、更に後世の画家達の作画態度に大きく作用したことを明らかにすることにある。 本年度は、前年度の研究テーマである文徴明の師・沈周(1427~1509)との関わりについての研究を継承発展させつつ、当初の予定通り、文徴明が最も敬慕していたという元時代の文人画家・趙孟フ(1254~1322)とどのように向き合い、自身の文人画家としての位置付けを見いだしていったかを、絵画調査と史料収集を通して考察した。調査の結果、文徴明は早期から沈周を通して、趙孟フの画を模写するなど、度々その画に接する機会を得ていたことがわかった。文徴明が趙孟フを理想とするうえで、沈周が大きな役割を果したことは未だ詳細な研究がなされておらず、新たな視点から師弟関係の実態とその意義を提示するものとなるだろう。 更に文徴明は、成熟期の1530年代になると、趙孟フに倣うとして、山水画のみならず樹石画などの様々な画題を描いており、趙孟フと自身の連なりを強く意識していたことが窺われた。これは本年度に趙孟フと文徴明の作品を多数実見調査する中で、文徴明の画に趙孟フの画法が明らかに取り入れられていることなどからも確認できた。 以上の成果は、本年度の研究目的であった、文徴明の画作における趙孟フの重要性を指摘する際に、大きな資となりうるものであるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、文献史料の収集、国内外所蔵作品の実見調査については概ね予定通りに進んだ。研究成果は、来年度に学会発表、論文等において公表するべく整理中である。 一方で、日本美術史を中心とするシンポジウムにパネリストとして参加し、自身の研究テーマを広く共有化させ、新たな議論を開く契機になったものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、国内外における文献史料・絵画史料の調査収集に努める。 昨年度・本年度の研究成果をあわせて、来年度以降、論文や学会発表、美術館における展覧会(2020年度予定)として公に発信してゆきたい。
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Causes of Carryover |
予定していた国外調査(中国)が、職務上の理由により実施できなかった。余剰分は、次年度の調査に関わる費用として活用していく予定である。
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Research Products
(4 results)