2018 Fiscal Year Research-status Report
15世紀ローマの壁画装飾事業にみられる競合意識について
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16K16731
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
荒木 文果 慶應義塾大学, 理工学部(日吉), 講師 (40768800)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | システィーナ礼拝堂 / 競合意識 / サンドロ・ボッティチェッリ / ピエトロ・ペルジーノ / フレスコ画 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、研究計画通り、15世紀のシスティーナ礼拝堂壁画装飾事業について論考を深めた。本事業は、教皇シクストゥス4世の発案で、フィレンツェとウンブリア地方から当代一流と目されていた画家たちがローマに招聘され、システィーナ礼拝堂の壁面に〈モーセ伝〉と〈キリスト伝〉連作を中心とするフレスコ画を制作したものである。その制作現場は、画家たちの共同制作の場であると共に、競演の舞台でもあった。 本年度の研究実績として、まず2本の論文を執筆・投稿した点を挙げたい。1本目においては、研究テーマである「競合意識」を扱う前提として、16画面からなる〈モーセ伝〉と〈キリスト伝〉連作の制作順序について新たな論を提示した(英語・採用決定済)。2本目においては、フィレンツェの画家ボッティチェッリとウンブリア地方出身の画家ペルジーノの画面を丁寧に考察し、ボッティチェッリの画面上に、画家としての強い自意識と他の画家に対する競合意識を読み取った(日本語・採用決定済)。 次に、イタリアのカンピサーノ社から著書を出版したことを報告したい(イタリア語、単著、Le cappelle Bufalini e Carafa: Dall’odio dottorinale e cultura tra domenicani e francescani alle rivalita' artistiche)。5章からなる本書では、本年度取り扱った論考の一部を含め、15世紀ローマにおける最大の美術事業の成果とみなされるシスティーナ礼拝堂壁画とこれまでに論じてきたブファリーニ礼拝堂壁画およびカラファ礼拝堂壁画との関連性を明らかにしながら、同時代の画家同士および注文主同士の競合意識について多角的に扱った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、15世紀のシスティーナ礼拝堂壁画に関する論考を論文化すると共に、その内容を盛り込んだ書籍も出版することができた。ローマで活躍した外来画家や注文主同士の競合意識については、研究計画の内容に沿って考察を深め、広く公表できる段階まで達したことから、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度までは、外来画家がローマで腕を奮った例について、主に1480年代に着手された礼拝堂壁画について論じてきた。それに対して最終年度は、ローマ出身のローカル画家アントニアッツォ・ロマーノが関わったと考えられている壁画、特にトール・デ・スペッキ修道院の聖女サンタ・フランチェスカ・ロマーナの生涯を描いたフレスコ画とサント・スピリト病院の教皇シクストゥス4世の生涯を題材としたフレスコ画を中心に考察を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
英語論文の英語校閲費〔人件費〕として想定していたが、字数の関係から誤差が生じた。次年度に予定している研究旅費の一部として計上したいと考えている。
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Research Products
(3 results)