2019 Fiscal Year Research-status Report
15世紀ローマの壁画装飾事業にみられる競合意識について
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16K16731
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
荒木 文果 慶應義塾大学, 理工学部(日吉), 講師 (40768800)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ボッティチェッリ / システィーナ礼拝堂 / 15世紀 / ローマ / 壁画 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31年度は、産休育休による約一年間の研究中断期間があったため、研究が大きく進展したとは言えない。しかしながら、平成30年度に採用決定済みとなっていた本研究課題に関わる論文2本(①システィーナ礼拝堂の側壁面に描かれたフレスコ画連作の制作順序に対する新たな提案 ②同壁画に確認されるフィレンツェの画家ボッティチェッリの芸術家としての強い自意識と共同制作を行った他の画家に対する競合意識に関する考察)について、適宜加筆修正を加え、論文化したことを報告しておきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は約一年間の研究中断の時期があったものの、前年度までに本研究課題に関わる書籍をイタリアで出版できた点、今年度は論文2本を公表できた点を勘案するとおおむね順調に進展していると評定して良いように思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度の当初の研究遂行予定は、ローマ出身の画家アントニアッツォ・ロマーノが関わったと考えられている壁画(サント ・スピリト病院の《教皇シクストゥス4世の生涯》とトール・デ・スペッキ修道院の《聖フランチェスカ・ロマーナの生涯》 )を中心に、ローカル画家と外来画家の競合意識を探る予定であった。基本的にその姿勢は変えないものの、それに限定せず、注文主側に注目した考察もあわせて進めていきたい。なぜなら、この2点の壁画は列聖前の人物の生涯に取材した連作を壁画に描いているという興味深い共通点があるからである。特に前者は、まだ存命中の教皇が天国に導かれる場面までが描かれた特異なものとなっている。これらの壁画制作の背後には、後世に記憶を伝えたり、信仰の場を形成するといった当時の壁画の機能を活用した個人的もしくは特定の団体の俗世的な思惑が見え隠れし、それが本研究のテーマである「競合意識」と繋がっていく可能性が高いからである。よって本年度は、主題選択や描法の比較、現地での作品調査を行い、口頭発表等で研究成果を公表しながら、広く意見交換していく。
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Causes of Carryover |
産休育休による約一年間の研究中断期間があったため、次年度に繰り越した。 政府の渡航レベルに注意しながら、イタリアでの現地調査を行いたい。難しい場合は、次年度への繰り越しを行うか、デジタルデータ活用のためのPC購入等にあてることを考えている。
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