2022 Fiscal Year Annual Research Report
Rivalry in mural painting projects in fifteenth-century Rome
Project/Area Number |
16K16731
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
荒木 文果 慶應義塾大学, 理工学部(日吉), 准教授 (40768800)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イタリア / 中世末期 / ルネサンス / ローマ美術 / 競合意識 / 托鉢修道会 / 壁画 / 写本 |
Outline of Annual Research Achievements |
22年度は、二大托鉢修道会の競合意識が確認される作例として『キリストの生涯の観想 Meditationes Vitae Christi』に関わるテキストと美術作品を比較・検討し、14世紀から15世紀のイタリアを中心としたフランシスコ会とドミニコ会の内的ヴィジョン形成のあり方や宗教画像に対する見解の相違を示した。そのうえで、フランシスコ会出身の教皇シクストゥス4世の命により、1470年代にローマで制作された壁画もまた同様のコンテクストで考察するべき作例であることを新たに提示し、その壁画を15世紀ローマ美術史のなかに位置づけた。研究遂行の諸段階で、リーズ大学で開催された国際中世学会(7月)や美術史学会東支部例会(1月)、研究会等で口頭発表を行い、意見交換の場を得た。既に考察の一部について英語で論文を公表済み、論考全体については日本語で論文集(出版準備中)に寄稿済みである。 22年度の研究実績として、さらに以下2点の報告をしたい。①「若手B」の研究で得られた論考の一部をまとめ、2020年にイタリア語で出版した自著が、アジア圏からは初となる第61回ダリア・ボルゲーゼ賞に選ばれた。5月にローマで行われた授賞式にて講演を行い、旧交を温めるとともに多くの研究者と親交を深めることができた。②ケンブリッジ大学出版から依頼されたフィリッピーノ・リッピの論文集(2019)に対する書評が、ルネサンス研究において権威ある学術雑誌Renaisance Quarterlyに掲載された。 22年度が最終年度となる本研究は、15世紀ローマの壁画装飾事業にみられる競合意識の解明を目的とした。結果として、当初の想定よりもはるかに多くの新知見を国内外の場で提案できた。また、考察対象とする作品の時間的・地理的広がりが一層豊かとなった点で、「若手B」の研究としてふさわしい成果が得られたように思われる。
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