2017 Fiscal Year Research-status Report
インターナショナル・ウエスタンの起源と展開―フロンティア表象の世界的普及の研究
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16K16748
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
川本 徹 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 准教授 (10772527)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アメリカ西部 / 西部劇 / マカロニ・ウエスタン / インターナショナル・ウエスタン / フロンティア / ジェイムズ・フェニモア・クーパー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、19世紀から現在にかけて、アメリカ西部のイメージが世界に流布したプロセスを包括的に解明することである。4年計画の2年目となる本年度は、おもにジェイムズ・フェニモア・クーパーの長編小説『モヒカン族最後の者』(1826)とそのアメリカ国内外でのアダプテーションに関する研究を行った。『モヒカン族最後の者』をふくむクーパーの「レザー・ストッキング物語」シリーズは、作家の生前から本国アメリカのみならずヨーロッパで人気を集め、数多くの作家に影響を与えた。19世紀末に誕生した映画というメディアにおいても、本シリーズはアメリカとヨーロッパで繰り返しアダプトされてきた。本研究では『モヒカン族最後の者』のアダプテーション映画に照準を絞り、アメリカで製作された数ヴァージョンとヨーロッパ各国で製作された多様なヴァージョンを取り上げ、とくにヒロインの姉妹と先住民の悪漢の描写に注目した比較考察を行い、各ヴァージョンの特色を解明した。この研究成果の一部を「誰が崖から落ちるのか? The Last of the Mohicansの映画版をめぐって」というタイトルの学会発表にまとめ、現在は論文化に向けた準備を進めている。ヨーロッパにおけるアメリカ西部の受容に最大級の影響力を誇ったのがクーパー作品であり、そのクーパー作品について集中的なリサーチができたことは、次年度以降、さらに広い地域におけるアメリカ西部の受容を考察する上で、弾みとなる成果と言える。こうした具体的な作品の分析に加えて、本年度はアダプテーションの理論に関するリサーチも遂行した。この成果は次年度以降、小説、旅行記、絵画、映画等、複数のメディアを横断する西部のイメージを分析するのに活用される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
リサーチそのものは着実に進んでおり、昨年度に課題として残されたクーパー関連作品の分析も実行できた。ただし、論文化がまだ途中の段階であるため、進捗状況は「(3)やや遅れている」とする。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、これまでの研究成果の論文化を進めると同時に、ジャンルの面ではノンフィクション、地域の面ではオーストラリアへと視野を広げ、西部のイメージに関するより包括的な考察を行う予定である。同時に、アメリカ本国における20世紀後半以降の西部のイメージの定型化についてもリサーチを行う。
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Causes of Carryover |
購入を検討しながら、年度内に入手不可能と判明した資料があるため、多少の未使用額が生じた。次年度は「今後の研究の推進方策」に記した研究を進めるために、資料購入、国内外の図書館やフィルム・アーカイヴでの調査、および研究発表のための旅費に費用を当てる予定である。
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