2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K16753
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
仁井田 千絵 早稲田大学, 総合研究機構, その他(招聘研究員) (40634548)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | パフォーマンス / メディア / 表象 / ライブ性 / ライブ・ビューイング / アメリカ / 音楽劇 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、パフォーマンスが視聴覚メディアによって歴史的にどのように表象されてきたのかを、1910年代から1940年代のアメリカにおける女性の演技者を対象に研究するものである。2016年度には、具体的な演技者のケーススタディーに入る前の基礎固めとして、以下の2点から研究を行った。 (1)パフォーマンスのメディア表象をめぐる理論的枠組みとして、「ライブ性」の概念に着目し、主にメディア・スタディーズ、パフォーマンス・スタディーズにおける先行研究の整理を行った。一般的にライブ性はメディアの不在から定義されるが、フィリップ・オースランダーらのパフォーマンス・スタディーズの研究が明らかにしているように、それは歴史的・社会的な要請によって常に相対化されるものである。これらを踏まえ、ライブ性の概念を歴史的に位置づける試みとして、今日映画館上映の一形態としてみられるライブ・ビューイングを、ラジオやサウンド映画を使用し始めた1920年代における映画館の興行形態との比較の中で捉え直す研究を行った。この内容は社会情報学会で口頭発表を行い、ライブ性に関する先行研究の理論的枠組みについては、共著論文の一部として東京大学大学院情報学環の紀要に寄稿した。 (2)アメリカにおけるパフォーマンスの事例として、アメリカにおける音楽劇(主にオペラ、ミュージカル)の歴史的変遷を整理した。ここから、アメリカにおけるオペラの普及にレコード、映画、ラジオなどのメディアが不可欠であり、とりわけオペラ・ディーヴァと呼ばれる女性歌手の表象に大きな影響を与えていたことが明らかになった。この成果は早稲田大学オペラ/音楽劇研究所企画の書籍『キーワードで読む オペラ/音楽劇 研究ハンドブック』に寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題はパフォーマンスのメディア表象に関する地域研究、歴史研究を最終目的とするが、初年度の2016年度に基礎固めとして理論的枠組みの整理を行えたことは大きな成果であった。とりわけ、社会情報学会の口頭発表、東京大学大学院情報学環紀要の共著論文を通して、メディア研究、情報学、文化人類学といった他分野の研究者と意見を交わすことができた。また、アメリカにおける音楽劇の展開については、早稲田大学オペラ/音楽劇研究所における他の研究者から、同時代のヨーロッパや日本の状況と比較したコメントや示唆をもらうことができた。一方で、理論研究や文献読解に年度末まで時間をとられたため、ケーススタディーにあたるアメリカでの資料調査や国外学会の参加を見送らざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
パフォーマンスのメディア表象、とりわけライブ性をめぐる理論研究に関して、音響の観点からさらに考察を進める予定である。これに関しては、まず2017年7月に開催される表象文化論学会にパネルのコメンテーターとして参加し、映画音響の研究者と意見を交わす予定である。また、現在申請者が進めている翻訳『サウンド・テクノロジーとアメリカ映画』の作業と平行しながら、音響がライブ性の概念の形成に果たした役割について理論的枠組みを整理し、学術論文としてまとめる。歴史研究に関しては、学期中にケーススタディーの基礎固めを行い、年度末の長期休業中に海外調査出張を行う予定である。
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Causes of Carryover |
理論研究や文献読解に年度末まで時間をとられ、アメリカでの資料調査ができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
長期休業中にアメリカで資料調査を行うための海外出張費にあてる。
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