2016 Fiscal Year Research-status Report
明治後期を中心とする油彩画の和洋融合形態の展開と受容
Project/Area Number |
16K16754
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石井 香絵 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (00732687)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 近代日本美術史 / 視覚文化史 / イメージ研究 / 比較文化研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は明治中期以降における油彩画の和洋融合表現の展開を明らかにすることを目的としている。平成28年度は関西美術会という、扁額や屏風といった日本の伝統的な形態による油彩画を多く手がけた洋画団体の創立メンバーである伊藤快彦、櫻井忠剛、牧野克次の創作活動について重点的に調査を進めた。伊藤については遺族のもとで聞き取り調査および資料調査を行い、櫻井については尼信会館での「初代尼崎市長 櫻井忠剛の事績」展の熟覧とともに尼崎市にて関連資料の調査を行った。 牧野克次については当初研究計画で予期していた以上に本研究において重要な作家であることが判明し、且つ新資料が多く発掘されたため特に優先的に調査を進めた。牧野が油彩で内装の壁画を手掛けたニューヨーク郊外に残る高峰譲吉の別邸「松楓殿」の見学を山田英俊氏の協力のもとに行い、ニューヨーク公共図書館、コロンビア大学図書館にて牧野のニューヨーク滞在時代、高峰譲吉およびニューヨークジャパンソサエティ、日本倶楽部、関連人物として霜鳥之彦、村山順など関連資料の収集に努めた。さらに松楓殿の元々の用途でがセントルイス万博(明治37年)日本館であったため、同博覧会の資料収集も行った。またこれまで明確でなかった牧野の家系についても新たに調査が進み、竹田美壽恵氏の協力のもと遺族の所蔵する資料調査を行った。さらに国会図書館関西館、京都工芸繊維大学付属図書館にて牧野および牧野が在職した京都高等工芸学校に関する資料調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で記した通り、研究計画では予期していなかったが牧野克次という洋画家の創作活動に関する調査が大きく前進したためである。牧野ひとりのみならず、牧野が開校時に助教授を務めた京都高等工芸学校の洋画応用の取り組み、卒業生の活動についても調査を進展させることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度も引き続き関西美術会の創立メンバーである伊藤快彦、櫻井忠剛、牧野克次を中心に関連調査を継続する。また平成28年度は上述したように牧野克次の関連調査に多くの時間を割く結果となったため、当初研究計画で予定していたトモエ会の基礎調査が進展しないままとなっている。平成29年度はトモエ会に関する一次資料の収集も同時に進めていく。ワシントンにてスミソニアン協会の所蔵品調査、京都にて伊藤、牧野他関西美術会の関連調査、尼崎にて櫻井忠剛の関連調査を予定している他、早稲田大学図書館、国会図書館、東京国立近代美術館ライブラリーにてトモエ会の一次資料収集を行う。
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