2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Exhibitions of Oceans: The Cultural History of Public Aquariums in Europe, the United States and Japan.
Project/Area Number |
16K16756
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
溝井 裕一 関西大学, 文学部, 教授 (60551322)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 水族館 / 歴史 / 文化史 / 表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度はまず、2016年度、2017年度における調査をもとに、古代~現代の水族飼育の歴史を、それぞれの時代の「水族観」、「海洋観」と統合し、さらに水族館展示の文化的特徴を考察・執筆することにつとめた。 たとえば、古代~近世においては、水族はなかなかその姿を見ることができない、神秘的な生き物と考えられる一方で、彼らに関する科学的関心も芽生えつつあった。とりわけ16世紀以降の西洋における魚類学の発展は目覚ましく、植民地支配の流れとも相待って、世界中の水族が科学者の手によって記述されるようになった。こうした科学的関心の高まりが、19世紀の水族館の誕生へと結びついていく。 つぎに、水族館展示の文化的特徴であるが、それは水中世界をそのまま陸上に再現したものというよりは、これをシミュレートしたものであり、そのさい我々が持つ水中世界のイメージが入り込む。また、その展示を通して得られるのは、リアリティというよりは、本物以上に本物らしいという感覚、すなわちハイパーリアリティであると結論づけた。 同時に、1970年代の環境意識の高まりによって、水族館が批判されるようになったプロセスも、「動物の権利」運動の高まりなどと関連づけて論じ、日本のみならず欧米においても水族館が岐路に立たされていることを指摘している。そして、現代行われている展示をもとに、本物の生き物だけでなく、ヴァーチャル・リアリティやロボット技術と融合した「ハイブリッド展示」の可能性についても論じている。 こうした複数の観点からおこなった考察を、単著『水族館の文化史-ひと・動物・モノがおりなす魔術的世界』(勉誠出版、2018)にまとめ、出版した。また、葛西臨海水族園副園長の錦織一臣氏が編集した『大人のための水族館ガイド』(養賢堂、2018)でも、その成果を公表することができた。
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Research Products
(2 results)