2017 Fiscal Year Research-status Report
近世中後期の日野・烏丸家の歌人における儀礼和歌を中心とした総合的研究
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16K16768
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Research Institution | Museum of Natural and Environmental History, Shizuoka |
Principal Investigator |
田代 一葉 ふじのくに地球環境史ミュージアム, 学芸課, 准教授 (90567900)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大嘗会和歌 / 烏丸光栄 / 元文度大嘗会 / 屏風和歌 / 日野資時 / 儀礼和歌 |
Outline of Annual Research Achievements |
近世期の公家歌人による「儀礼和歌」について考察する本研究の2年目として、元文度大嘗会和歌に焦点を当て、下記のような資料や文献の調査を行った。 旅費を用いた研究調査として、宮内庁書陵部では『大嘗会屏風和歌』、『大嘗会風俗御屏風詠進和歌』『大嘗会和歌詠進日記』など本年度の成果と直接関わる資料に加え、天明度および文政度の大嘗会に関わる資料を閲覧・調査した。東京国立博物館では、元文度大嘗会和歌の詠進者である日野資時の日記を熟覧し、東京国立博物館資料館においては、屏風として現存する江戸後期の大嘗会屏風約50点の画像データを調査し、複写した。 そのほか、関係する先行論文や文献の調査を国立国会図書館、静岡県立図書館、静岡大学図書館、日本女子大学図書館などで実施した。 また、明治神宮文化館宝物展示室で行なわれた特別展覧会「近代の御大礼と宮廷文化―明治の即位礼と大嘗祭を中心に―」において、明治度を中心とした近代の大嘗祭に関する資料を見る機会を得た。 今年度に公にした研究成果としては、元文度(1738)の大嘗会和歌復興に尽力した烏丸光栄(1689-1748)の詠進日記や周辺の資料を読み解くことで、朝廷・幕府双方の思惑が複雑に絡んだ大嘗会および大嘗会和歌復興の様子の一端を明らかにした論文がある。ここでは、詠進日記からは、大嘗会の前年末にすでに和歌詠進の打診があったことがうかがえ、光栄が『兼仲日記』など歴代の古記録を精査・研究することで、300年近く絶えていた大嘗会和歌を復活させることができたことについて述べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の進捗状況としては、江戸期全般の大嘗会和歌関係の資料の閲覧調査が、計画通りに進まなかったことにより、当初の計画よりも遅れが生じていると言える。 原因としては、昨年度からの引き続きの課題である、同一書名の資料の同定作業などが思うように進まなかったことが挙げられる。大嘗会関係の資料は膨大な量に上るが、備忘録としての各公家の家の古記録類は、書名・資料名などが簡潔であるが故に、同一の書名であっても同内容の資料である場合もあれば全く別のものということもあり、資料調査とその情報の整理に想像以上に時間がかかってしまっている。 上記のことに伴って、本来は大嘗会和歌の調査と平行して行なう予定であった寛政度内裏造営の際の障子和歌についての基礎的な資料の調査には、取りかかることができなかった。 そのような状況下にあって、東京国立博物館蔵の江戸後期の大嘗会屏風について知ることができたのは、大嘗会和歌を考えるにあたり重要であった。京都国立博物館にも所蔵されている屏風があるとの情報もあり、今後は、これに関する美術史研究の成果と、これまで調査を進めてきた文献資料とを合わせて考察を進めることで、より新たな知見が得られるのではないかと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、近世期に行われた大嘗会和歌の中でも時代や対象をより絞った形で調査を進めるなど、できうる限り効率的に資料調査を実施できるように基礎調査を念入りに行いたい。具体的には、烏丸光栄が取り仕切った元文度大嘗会和歌以降、それがどのように継承され、あるいは新たな試みが行われたのかについて、元文以前との比較も含めて考察を深めていきたいと考えている。 また、資料収集の方法については再考することとし、これまで主に国文学研究資料館の「日本古典籍総合目録データベース」の情報により資料の所在を把握していたが、今後は歴史学系のデータベースを活用したり、美術館の資料所蔵情報を集めたりするなどして、今までには知り得なかった資料の発掘にも努めたい。 さらに、平成31年の今上天皇の退位と新天皇の即位に伴い、大嘗祭も行われることが決定したことに関連して、近代やそれ以前の大嘗会に関する研究や書籍も出始めている。 本研究の計画を立てた段階では予期できないことであったが、近世期の資料だけを用いて近世期の儀礼和歌を考えるのみならず、最近の成果や今後執り行われる現代の宮中行事に関しても目配りをしつつ、近世期の大嘗会和歌を中心とした儀礼和歌について考察を進めていきたいと考えている。 それに伴い、しばらくは大嘗会和歌に注力した研究を進めつつ、寛政度内裏造営の際の障子和歌についても可能な範囲で基礎調査に取りかかることを予定している。
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Research Products
(1 results)