2016 Fiscal Year Research-status Report
『出雲風土記解』の写本分析を中心とした『出雲国風土記』の研究
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16K16770
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
伊藤 剣 明治大学, 法学部, 専任講師 (70453991)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 『出雲風土記解』 / 『出雲国風土記』 |
Outline of Annual Research Achievements |
『出雲風土記解』は江戸時代の内山真龍が著した『出雲国風土記』の注釈書で、写本によって伝えられているものである。内山自身が多くの校異情報を伝えており、風土記本文を検討するのに貴重な情報を遺してくれるばかりでなく、現在でも色褪せない風土記の解釈を示してもいる重要な書である。また、『出雲風土記解』の中には、先人の書き込みを残しつつ後人がさらに書き加えていった写本もある。これらの書き込みを分析することで、江戸時代の『出雲国風土記』の受容の在り方の一端を探ることも可能である。このように、『出雲風土記解』の写本群は『出雲国風土記』の写本研究、受容の在り方、本文読解の上で有益な材料を提供してくれるものである。 平成28年度は、①『出雲風土記解』写本の調査、②『出雲国風土記』写本の調査、③これらの精査による『出雲国風土記』本文読解の深化の3点に取り組んだ。 ①では島根県立図書館・東京大学附属図書館・東北大学附属図書館に赴き調査をした。島根県立図書館本は、これまで知られていた写本と兄弟関係にあることが明らかになった。 ②では日御碕本『出雲国風土記』が後の写本に与えた影響の分析をし、日御碕本とは別系統にあるとされている写本の本文には、日御碕本を前提にしなければ生まれえない箇所があることを指摘し、別系統という考え方に異議を唱えた。この成果は年度内に刊行された論文で公表した。 ③では内山真龍の指摘を参考に、『出雲国風土記』の河川記事の分析を行った。この成果は年度内に刊行された論文で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
『出雲風土記解』写本の調査が当初の予定よりもやや遅れている。育児に関する見通しが甘く、遠方への調査が思うようにいかなかったことや研究に割く時間が計画時よりも少なくなってしまったのが原因である。
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Strategy for Future Research Activity |
宿泊を伴わない近場での写本調査を優先的に進めたい。多くの写本にあたることで問題点を絞り込み、遠方での調査を効率よく進められるようにする予定である。
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Causes of Carryover |
写本調査に赴く回数が少なくなってしまったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
写本調査に赴く回数を増やすようにする。
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