2017 Fiscal Year Research-status Report
『狭衣物語』現存写本の悉皆調査と新校本作成のための基礎的研究
Project/Area Number |
16K16775
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
須藤 圭 立命館大学, 文学部, 助教 (70706613)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 狭衣物語 / 諸本 / 古筆切 / 本文 / 異文 / 注釈 / 源氏物語 |
Outline of Annual Research Achievements |
1, 京大五冊本、京都大学吉田南総合図書館蔵本、河野美術館蔵十冊本の詳細な調査・検討を行ったほか、肥前島原松平文庫において松平文庫本、学習院大学において三条西家本、伝中院通躬筆本の調査を実施した。また、国文学研究資料館が所蔵するマイクロフィルムによる調査も行い、主に、従来、詳しい考察が行われていない現存写本の調査をすすめた。この調査によって、上記した写本が『狭衣物語』の本文系統の大幅な見直しを迫るものではないながらも、少なくはない特異な本文をもつことが判明し、『狭衣物語』の読解の歴史を考えるときに貴重な証言を有することがわかってきた。これらの研究成果は、次年度以降に公開していく予定である。 2, 昨年度に引き続き、諸本を考察するうえで重要と思われる写本については、そのテキストのデータ化作業をすすめた。今年度の対象としたのは、①伝為明筆本、②伝慈鎮筆本、③伝清範筆本、④保坂本、⑤紅梅文庫本の五本である。特に、『校本』を欠く巻四については、『校本』にかわる新たなスタイルを模索しながら、データ化した本文の対照を試みた。 3, これまでの調査結果をもとにして、現存写本の書誌情報や翻刻・研究の有無をまとめた「狭衣物語諸本総覧」の執筆に着手した。現存する全ての写本の情報をまとめ、公開することは、『狭衣物語』の考察を前進させていくために必要不可欠な作業である。 4, 現存写本だけではなく、古筆切の調査・収集にもつとめた。おおよそ五十種二〇〇葉を超える断簡を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、現存写本の悉皆調査を開始し、いくつかの成果を挙げることができた。また、現存写本の全体像を把握するべく、「狭衣物語諸本総覧」の執筆も開始し、個々の写本の相関関係を検討できた点は大きな成果といえる。ただし、調査の過程で、未だ、学界に紹介されていない現存写本の存在も多く判明した。現存写本の悉皆調査をとおし、その全体像を見とおそうとする本研究では、現存写本をくまなく検討することが求められる。研究の遅れとみるべきである。次年度以降の課題とする。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、現存写本の悉皆調査を実施するほか、「狭衣物語諸本総覧」の執筆、未知の写本の探索、古筆切の調査・研究を行う。現時点では、刈谷市中央図書館蔵本、イギリス・ケンブリッジ大学蔵本のほか、狩野文庫、稲賀文庫などの調査を予定している。これまでと同様、これによって得られた成果は、学術雑誌、もしくは、口頭発表をとおして公表していく計画である。『狭衣物語』の本文が示す世界は広大だが、本研究によって、いっそうの広がりをもたらしていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
(理由)物品費、旅費等における端数のため。 (使用計画)当初の計画どおりに使用する。
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Research Products
(3 results)