2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16776
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
小林 敦子 就実大学, 人文科学部, 准教授 (70422912)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 近代日本文学史 / 昭和文学史 / 近代日本思想史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本近代文学館所蔵の高見順文庫を軸に、高見順に関連する書簡・草稿等一次資料の調査・分析を行うものである。 高見順は、昭和期を代表する小説家・詩人であるとともに、現在の近現代文学研究の拠点である日本近代文学館の設立をリードするなど、日本の近代文学の位置づけに関して、社会的に大きな役割を担った人物と言える。文学界内外の問題に広汎な関心を持った高見の知的な交流は、総体的な社会現象としての近代文学を考える上で極めて重要であるが、それを直接的に明かす書簡等の本格的な調査はまだ一部に留まっている。本研究では、これまで十分に研究対象とされてこなかった高見順の書簡・草稿等の一次資料を調査し、高見を中心とする昭和期の文学者・知識人の思想的交流と、文学観・文学史の展開の様相を明らかにすることを目指している。 数多くの草稿と、5000通以上ある高見順宛諸家書簡を含む高見順文庫は、長期間かけて悉皆調査がなされるべきであるが、今回はその基礎的な段階の調査として、資料群の全体像を確認し、高見と同時代の文学者・知識人との知的交流を顕著に示すものを選出・分類することをすすめている。 今年度は、戦後の代表作の構想ノートと、特に数の多かった文芸批評家からの書簡群を抽出し、詳細を調査した。高見の作品構想過程における歴史認識を明かす重要な資料、また高見順のみならず、文壇の中心を担った近代文学者の文学観がよくわかる、未刊行の重要な書簡が多数存在することが確認できた。特に有意味と思われる資料について、文学史・社会史の観点からその価値を検証しながら、論文等での公開を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所蔵資料には、長文の資料も多くあり、一つ一つの資料の内容の把握とその背景からの検証に、かなりの時間が必要であった。また、書簡という性格から、高見順宛書簡と対応する高見順からの諸家書簡も確認する予定であったが、その所蔵先は相当多岐に渡る可能性が高いことがわかり、優先度をふまえ計画の変更が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を鑑み、今後は資料群の重要性を明かす事象を一つに選定し、それに関する書簡・草稿に絞る形で調査・分析を進めていく。 また所蔵されていても、現時点では著作権の観点から、論文公開等にあたって確認が必要な資料も多く、その事前準備も念頭におきながら資料を選出していく。
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Causes of Carryover |
今年度は校務との兼ね合いから調査出張に行く回数を多くとることができなかった。 また、調査の進展によって、資料群の概要をある程度把握してから、具体的に必要となる文献・物品等を選定して購入する必要があると考えたため、今年度の使用が予定よりも少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査費として旅費の使用、および物品費として、パソコン、画像処理等のソフト、関連文献を購入する予定である。
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