2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K16781
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Research Institution | Ishikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
山崎 梓 (土谷梓) 石川工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (00465915)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 近世文学 / 書誌 / 地方 |
Outline of Annual Research Achievements |
大楽寺(富山県射水市)は、近世後期から明治初期にかけて当該地域における学びの場であったため、多数の古典籍を有している。その種類は仏教書をはじめとして歴史・算術・医学関連など多岐にわたり、加えて現住職が蒐集した文学(戯作を含む)関連の書物も多い。本研究は上記の書籍のうち未調査であるもの、特に文学関連の書籍を中心に調査を進めることで所蔵資料の全体像を把握するとともに、地方における文学受容の在り方を探るという目的で始めたものである。 平成29年度は、前年度に引き続き文学に関連する資料の調査に取り組み、最終年度に完成を目指す目録作成の準備を進めた。既に仮番号を付して書名などの確認を終えた500点余りの書籍について、目録に必要な詳細な書誌情報〈書名/著者名/刊写年/刊写者/装丁/蔵書印など〉を採集しデータ入力作業を進めるとともに、書誌情報の根拠となる部分を撮影し、現地でなくともデータの確認・修正が可能な環境を整えている。 書籍を詳細に調査していく中で文学関連の書籍、特に山東京伝をはじめとした戯作類などは近世後期から明治初期に大楽寺が所蔵していたものではなく、現住職が自身のルーツに関連するものとして後に蒐集したものがほとんどであることがわかってきた。よって、本研究で近世の地方における文学受容の在り方を探るという目的は明らかにし難い状況である。しかし、現在においても地方は戯作の実物を手に取って見ることができる環境に乏しいことから、目録作成は地方在住の研究者に向けて蔵書の明確化と発信という点で意義のある事といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の29年度実施計画のうち、当初予定していた調査回数よりは少ない実施となったが、研究協力者との連携により採集すべきデータ(項目)の明確化と調査手順を決定し、データ入力とチェックを同時に行うことができた。後者の方法については従来現地で書籍を見て確認するのみであったが、データ入力の際にその根拠となる箇所を撮影して保存しておくことで現地でなくとも確認できる体制が整えられつつあるため、今後は現地調査が不可能な時期においてもデータの正確性を高める作業は進めることができるようになると考えている。 前年度の調査では詳細なデータが少なかったため明らかではなかったが、大楽寺が所有している文学関連の書籍は後に蒐集されたものがほとんどであることが徐々に明らかになってきたため、研究の目的として掲げた地方の文学受容の在り方を探るには困難な状況であることがわかった。しかし、地方にまとまった数の戯作類があるという環境はたいへん珍しく、地方在住の研究者に向けての情報発信として研究の重要性を確認し、近世戯作研究の発展のためという目的を改めて定めることができた。 以上より、データ収集の面においては調査回数を増やすなどの対応は次年度以降に必要ではあるが、環境の整備は順調に進んでおり、また研究の目的および方向性は定まったという点においておおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査においてデータ採集の手順などが決定しているため、前年度と同様の作業内容で調査を進める。ただし、当初の目標であった全体の60~70%について作業を終えるというところにまでは達していないため、平成30年度は調査回数あるいは1回あたりの調査日数を増やしてデータ収集を重点的に行い、計画が大幅に遅れないよう目録作成に向けて準備を進める方針である。また、地方における文学受容を考えるというテーマでシンポジウムの開催を予定していたが、大楽寺伝来の書籍ではないものが多数あることからシンポジウムの実施については30年度に再考することとする。最終年度には完成した目録を公表し、地方における古典籍の存在を発信することで今後の研究発展に寄与したいと考えている。
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Causes of Carryover |
総数500点余りの書籍について調査を進めるには多くの研究協力者に依頼する必要があり、さらに現地での調査実施では所有者の負担(調査時間および場所の提供)も大きくないことから、まとまった人数で調査できる日程が設定しづらいことなどにより当初の予定より調査回数が少なくなり、謝金の面で当初の計画と異なる結果となった。 次年度は研究協力者と行う調査の日数と回数を増加させることと、近県在住の研究協力者のみで行う調査を別途実施することで前年度繰越金を旅費および謝金に充てる。また、調査で使用する消耗品(USB、半紙、文具など)の追加購入も必要なことから、それらを物品費に充てることとする。
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