2018 Fiscal Year Research-status Report
1920-30年代日本女性詩人による英語詩の文学研究―畠山千代子を事例として―
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16K16783
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
高橋 由貴 福島大学, 人間発達文化学類, 准教授 (90625005)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 日本の英語詩 / 女性詩人 / 雑誌「地上楽園」 / William Empson |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、研究支援者の援助を受けながら、資料の読解をスタートさせた。具体的内容は以下のとおり。 ①草稿資料の読解と翻刻……【1-151~1-158 日本語詩(未収録原稿)】の部分から、日本語詩を書きつけた茶色の手帖の翻刻作業を行った。判別できた詩(草稿)のタイトルは23篇。 日付は早いもので1930年12月、最後のページの日付は1933年3月となっている。どのページにも大幅な手入れがなされ、青や赤インクでの加筆修正や黒字での塗りつぶし・抹消線・ページ全体に×が付されている。これらは、雑誌『地上楽園』に発表された詩「静かなる海へ」「孤独を愛す」「ヘルデルリーンへ」「春の招き」「春一 田園の晝休み時」「春二 田園の寶」「地を打つ涙」「小康」「詩人のすがた」の元になったものとみられる。 ②エンプソンからの書簡の読解と翻刻……【2-1159~1202 エンプソン手紙】のうち、エンプソンから千代子に宛てた8通の書簡の読解と、同封されていた千代子が作った英語詩およびそれに対するエンプソンのコメントの読解と翻刻とを行った。 1通目の日付が1933年6月、2通目が1933年12月、3通目が1934年5月、4-7通目は日付なし(いずれも1934年の期間)、ここまでが東京から出されたものであり、8通目が1935年7月付ロンドンからの手紙となっている。また千代子がエンプソンに送った英語詩は18篇あり(そのうち"The small bird to the Big"のみ現物確認できず)、いずれにもエンプソンは詳細に目を通して丁寧なコメントを加えて返送していた。資料はインクが飛んでいたり破損していたりして判読しづらい箇所が多々あるので、慎重に精査・読解を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
畠山千代子の日本語詩の翻刻作業が順調に進んでいる。特に茶色の手帖に記されたノートに書きつけられた詩は、1932年から『地上楽園』に掲載された決定校の草稿に当たることが判明している。エンプソンからの書簡および千代子英語詩の読解も予定通りに進んでいる。ところどころ判別不能なところがあり、十全に判読できているとはいいがたく、判読に限界があるが、千代子の英語詩とそれに対する指導の具体的内容は明らかになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の作業としては①草稿ノートから翻刻した詩の本文確定、②エンプソンによる畠山千代子の英語詩に施した添削の具体的内容についての調査と報告、この2つである。 茶の手帖から翻刻した詩は、さらに精査をし、複数の目で確認を行い、雑誌『地上楽園』に発表された決定校とともに、紀要等で公表を行う。その他、作詩の時期の特定、雑誌掲載に至る過程、掲載後の詩の評価についても調査を行う。また、草稿ノートを用いた生成論的なアプローチにも着手したい。 また、エンプソンの書簡と千代子の英語詩とそれに対するエンプソン書き込みやコメントの判読について鋭意進めたい。特に千代子がエンプソンに送った17篇の英語詩(改変・修正したものは、添削を受ける前と改変後の2バージョン)は翻刻し、最終年度中に公表するつもりである。
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Causes of Carryover |
約10カ月間の産休育休を取得し、最終年度に予定していた調査を1年後ろ倒しにする計画にしたため。
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