2019 Fiscal Year Research-status Report
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16K16784
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
小田 夕香理 富山大学, 学術研究部芸術文化学系, 講師 (70511880)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ブロンテ / 英文学 / 女性文学 / 20世紀 / ヴィクトリア朝 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度の途中から研究を中断し、2019度から再開した。研究再開時に研究をスムーズに進められるよう、研究中断前に多くの文献を取り寄せてあったため、2019年度はまずそれらの文献の分析に時間をかけ、また、研究中断前に行っていたシャーロット・ブロンテ関連の作品の分析を継続して行った。加えて、研究の再開にあたり、1945年以降のブロンテ姉妹に関連する英国女性作家の作品について、本研究で研究対象とする作品を改めて見直し、研究を中断していた期間に新たに発表された作品を探索することにも注力した。ブロンテ姉妹に何等かの関連をもつ作品が非常に多く存在することから、これまで、英文学史の流れを見直すという本研究の目標に沿って、文学的価値や、作家独自の物語として新たに創作されたと考えられる作品を研究対象とするという方針で進めてきたが、今回の見直し作業によって、この研究課題において分析するに相応しいと思われる作品をさらに精選し、また新たに追加することができた。 シャーロット関連の作品の分析を進めるなかで、2020年度に特に注目したのは、アイリス・マードックの『ユニコーン』である。『ユニコーン』には、シャーロットの『ジェイン・エア』に共通する要素があるが、研究を進めるなかで、この作品がエミリ・ブロンテの『嵐が丘』にも関連することが明らかになったため、結果として『ユニコーン』と『ジェイン・エア』だけでなく、『嵐が丘』の分析にも時間を費やした。2019年10月に開催された日本アイリス・マードック学会では、本研究課題の成果の一部として、『ユニコーン』と、『ジェイン・エア』、『嵐が丘』を比較考察し、マードックとブロンテ姉妹の関連性を論じた研究発表を行った。また、この発表の内容を発展させて論文にまとめる作業も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アイリス・マードックの『ユニコーン』が『ジェイン・エア』だけでなく『嵐が丘』にも関連する作品であったため、『嵐が丘』のテクストや関連資料についても急遽分析する必要が生じた。結果として、予定よりも多くの時間を『ユニコーン』とブロンテ姉妹の関連についての研究に費やしたため、他の作品の分析に遅れが生じた。また、新型コロナウィルスの影響で、年度末に情報収集を予定していた学会等が中止になったという要因もある。
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Strategy for Future Research Activity |
シャーロット関連の作品の数が多いため、引き続きシャーロット関連の作品についても分析しつつ、エミリとアン・ブロンテに関連する作品の分析を行い、三姉妹それぞれの関連作品の特徴をまとめて比較する。三姉妹の二人以上に関連する作品については、三姉妹それぞれの関連作品について分析を終えた後で取り上げる。その後、分析した作品を年代ごとに考察し、ブロンテ姉妹が戦後の英国女性文学においてどのような役割を担ってきたのか、女性の人生や女性作家の在り方について人々の認識がどのように変化したのか、ブロンテ姉妹に関連する作品が英文学史の流れにおいてどのような意味をもつのかを考察する。2019年度は、2017年度に取り寄せてあった文献を中心に研究を進めたため、新たに文献を入手する必要はあまり生じなかったが、2020年度は本研究を全体的に検証し、まとめるため、作品分析に必要な文献、19・20世紀の英国の文学や社会、文化に関する文献、ブロンテ姉妹に関する文献の入手・分析を、幅広く、かつ継続的に行う。また、学会に参加して情報収集や成果発表を行い、成果を論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
2017年度の研究中断前に取り寄せておいた文献の分析に時間をかけた結果、新たな文献の入手があまり必要ではなかったこと、海外への調査出張を計画したが、現地へ赴くことなく資料を入手できることが判明したこと、新型コロナウィルスの影響により、年度末の出張が取りやめとなったことにより、次年度使用額が生じた。翌年度は、最終年度であることもあり、作品分析に必要な文献、19・20世紀の英国の文学や社会、文化に関する文献、ブロンテ姉妹に関する文献の入手・分析を、幅広く、かつ継続的に行うために、翌年度分として請求した助成金と合わせて、今年度生じた次年度使用額を使用したい。また、学会等に参加して情報収集や成果発表を行うための旅費としても使用したい。
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