2018 Fiscal Year Research-status Report
ポスト・インダストリアルのアトランティック・カナダ文学―リチャーズを中心に
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16K16788
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Research Institution | Keiwa College |
Principal Investigator |
荒木 陽子 敬和学園大学, 人文学部, 准教授 (90511543)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アトランティック・カナダ / ポストインダストリアル / 産業空洞化 / 地方の衰退 / 環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度はこれまでの研究を深めると同時に成果を広く共有するために、公開講演会および学会シンポジウムの計画・運営・開催に努めた。5月にはカナダのアカディア大学で、アトランティック・カナダ研究学会にて、通常西海岸のアジア系女性作家の枠組みで研究されるニューファンドランド育ちの作家ラリッサ・ライを取り上げて、発表"Talking through the Absence: Larissa Lai in the Atlantic Canadian Context"を行い、現地の研究者と活発に意見を交わした。特に6月にはカナダより、アトランティック・カナダ文学ならびにD.A.リチャーズの文学に精通するセント・トーマス大学トニー・トレンブレー教授をむかえて、公開学術講演会(於・新発田市敬和学園大学)と、日本カナダ文学会特別講演(日本カナダ文学会年次研究大会、至・椙山女学園大学)を行った。特に新発田市における講演の後には、産業の衰退とともに衰退する地域の文化を権力への抵抗として文化的記憶に残す活動をトレンブレー氏が論じたのち、地域の文化人と交流する機会が設けられ、地域住民とも成果が共有された。また、名古屋市における日本カナダ文学会においては、荒木の企画・司会で同氏の講演とそれに続く本研究の成果でもあるシンポジウム「産業・環境・カナダ文学」を執り行い、筆者の「ポストインダストリアル」というパースペクティブをカナダの一地域から、カナダ全体へと発展させる方向性を探るべく、講師の佐藤アヤコ氏、室淳子氏、佐々木奈緒氏に依頼し、それぞれ女性、先住民、ケベックという専門的な視点から、トレンブレー氏によるアトランティック・カナダ文学の講演に続いて論じていただいた。その成果と今後の課題を考察し『カナダ文学研究』第28号にシンポジウム概要として寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ダブルケア状態(育児・介護)という筆者の個人的時間の制約と昨年度後期の講義の過密(最大週9コマ)による時間的制約により研究が進まなかった。また、シンポジウム、公開講演会などの成果発表のイベントの企画、開催、実施という実務や裏方の仕事に時間を使ったため、論文の執筆ができなかった。ただ、イベントの開催で得た情報により研究が深まったため、その結果を2019年8月に開催されるエコクリティシズム研究学会のシンポジウムで発表することになり、このシンポジウムの発表までを研究成果に入れたいと考え、研究期間を一年延長して取り組むこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
日本カナダ文学会におけるシンポジウムの開催で情報共有が行われ、エコクリティシズム研究学会のメンバーとのシンポジウムにおけるコラボレーションが2019年8月に実現する運びとなった。その研究成果はエコクリティシズム研究学会のシンポジウムで、「アトランティック・カナダの資源と環境――リチャーズとキャンベルを中心に」として発表することになり、現在はその準備中であり、最終的には論文としてまとめる予定である。また、本研究の成果を書籍として出版予定であり、2019年末をめどに英宝社に入稿予定で、執筆中である。
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Causes of Carryover |
2019年8月のエコクリティシズム学会研究、シンポジウム発表のための準備、移動に費用が掛かるため。
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