2016 Fiscal Year Research-status Report
現代英語圏黒人文学における子ども表象についての研究
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16K16790
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
岡島 慶 目白大学, 外国語学部, 専任講師 (10710569)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 黒人文学 / 子ども表象 / ポスト植民地主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究計画の中心として、1.子どものイノセンスをめぐる思想史のサーヴェイと2.現代黒人文学作品の中で見られる黒人の子ども表象の具体的な分析という二つの柱を立て、それぞれについて文献調査や先行研究の精査、論文の執筆を行った。まず、1.の子どもの思想史に関する文献調査について。アメリカにおける子ども史を扱う文献や黒人文学研究の領域における文献を調査した。中でも本研究にとりわけ有用に思われるのが、Valerie Loichotが著したOrphan Narrativesという研究書である。Loichotは、「プランテーション」を一つの手がかりとしてトニ・モリソンやエドゥアード・グリッサンといったカリブ地域とアメリカの作家たちが共通して描き出す奴隷制によって個々人が持つ起源から切り離された「孤児」に着目している。トランスナショナルな比較文学という点で、本研究と似た視座を持ち、その分析手法が「孤児」ということもあり、本研究にとっては非常に有用な先行研究となった。次に2.の作品分析について。本年度は予定を変更し、Chris Abaniが2007年に出版した作品Song For Nightの作品分析を行い、研究論文を執筆した。本作の主人公少年兵My Luckは、生と死、声と沈黙、犠牲者と加害者といった様々な領域を横断し、消費可能なメランコリックな他者という一面的な表象を拒む。彼の曖昧なモビリティはポスト植民地世界における子ども兵に付与されるイノセントな他者というステレオタイプを突き崩すものである点を論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
論文執筆に時間を取られ、子どもの思想史関連の文献の精査が十分できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方策としては、まず28年度中に十分調査が出来なかった西洋思想史における子ども像の変遷について時間を取りたい。その後、文献の精査から得られた知見を基盤として、ポスト植民地世界における黒人文化・文学における子ども像との比較検討へと進んでいきたい。
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Causes of Carryover |
28年度は、論文の英文校正に予算を支出した関係で、当初予定していた国際学会での発表を見送り、そのために差額分が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた差額分は29年度中に執筆予定の論文の英文校正費に充て、今年度は余裕を持って国際学会にて参加し、研究発表を行いたい。
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