2017 Fiscal Year Research-status Report
現代英語圏黒人文学における子ども表象についての研究
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16K16790
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
岡島 慶 目白大学, 外国語学部, 准教授 (10710569)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 幽霊 / アフリカ的死生観 / 人道主義批判 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究課題の第二段階として、子どもが幽霊として登場するアフリカ系の文学作品に焦点をあてた。今年度の研究の最大の目的は、いかにこうした作品が西洋中心主義的な黒人の子どもを巡る言説に働きかけ、支配的な言説を解体しうるかを検討することであった。こうした目的を達成するために、主にポスト植民地主義理論を参考にしながら、アフリカ系文学作品に登場する子どもの幽霊とトラウマ的記憶・体験の関係性に着目した。 具体的には、ナイジェリア出身のクリス・アバニの小説Song For Nightを分析の対象として取り上げた。昨年度の研究で途中まで執筆していた論文を発展させて、学会誌に掲載することが出来た。2007年に出版された本作品は、ナイジェリアの内戦中に家族を失い、少年兵にしたてられた少年My Luckの物語である。戦地で所属する部隊からはぐれたMy Luckは、仲間を探す旅に出るが、実は彼自身、地雷の爆発に巻き込まれて死亡している。しかし、本人はそのことに気が付いていない。ゆえに、仲間探しの旅は生から死への超現実的な旅の意味合いを持つ。旅の途中、過去のトラウマ体験がフラッシュ・バックとして甦ってくる。 本作品の最大の魅力は、My Luckの「死にきれなさ」と彼の「救済不可能性」が実は西洋読者の感情的カタルシスのために描かれる人道主義的言説を揺り動かしている点である。生と死の中間領域に彷徨うMy Luckの曖昧さについて精読することで、子どもの可傷性に仮託されるアフリカ的死生観が、ポスト植民地時代において連綿と続く西洋中心主義的言説に働きかける様が浮かび上がってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はアバニのテクストを精読し、研究を深めることが出来た。アフリカ系文学にみられる子どもの独自性について一定の成果を上げることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度はアフリカ出身の作家に焦点を当てたが、平成30年度は、アメリカの黒人作家に焦点を当て、アフリカ系作家との共通項や相違点などを探っていきたい。とりわけ、黒人女性SF作家Octavia Butlerの作品について研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
今年度は海外学会での研究発表が、日程の都合で叶わなかった。次年度は海外学会での研究発表を行う予定であるので、出張旅費の一部として使用したい。
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