2017 Fiscal Year Research-status Report
Reconstructing Wilderness Ideology in American Literature
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16K16791
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
山本 洋平 明治大学, 理工学部, 専任講師 (40646824)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / 環境文学 / エコクリティシズム / ウィルダネス / ソロー / メルヴィル / ウィラ・キャザー / マニフェスト・デスティニー |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年から2017年度までの研究で、19世紀アメリカ文学における「ウィルダネス(wilderness)」表象を分析し、系譜的に論述する基盤を整えることができた。第一に、英語で手に入る文献のリスト化を進め、順次入手し、読み込みを進めている。第二に、海外研究者との情報交換を進めることができた。カリフォルニア州を中心としたフィールドワークによって、アメリカにおける都市と荒野のダイナミズムを痛感しつつ、地域ごとの気候の違いなどを肌で感じることができた。そうした経験を活かし、フランスでの国際学会にて研究発表を行った。欧米における研究成果に触れ、またフィードバックを受けることができた。 以上の研究実績を通じて把握したことは、ネイチャーライティングとはあくまでも対象化された自然描写ではなく、あくまでも主観による「記録」の側面、とりわけ人種、ジャンダー、および気候との相互交渉を通じたテクストであるということである。手つかずの荒野に特権的な地位を与える自然観、すなわち「ウィルダネス・イデオロギー」の理論化を進めるにあたり、人種的な観点が不可欠であることを認識した。そうした認識に基づいて、ソローにおける奴隷制度批判についての論文、および、メルヴィルの「バートルビー」とウィルダネスの出現の関連性についての論文を、それぞれ発表した。 他方、20世紀の女性作家ウィラ・キャザーにおけるウィルダネス表象の研究および19世紀の歴史との関連を深める試みを進めている。資料収集を進め、論文も準備中であり、2018年度以降に発表を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
若手研究の2年目を終え、4年のプロジェクトの折り返し地点に来たところである。これまでの成果は順調であると言える。ソローについては「ソローの嗅覚:”Slavery in Massachusetts”とDissentの位相」『ヘンリー・ソロー研究論集』第43号, 2017年、および“Civil Disobedience and the Postwar Okinawan Novelist Medoruma Shun.” Thoreau in the 21st Century: Perspectives from Japan, edited by Horiuchi Masaki, Kinseido, 2017. pp. 85-97.を、メルヴィルについては「バートルビーの眼をとじる:超越主義的ネットワークにおける視覚、身体、他者」『環境人文学Ⅱ 他者としての自然』野田研一,山本洋平,森田系太郎編著, 勉誠出版, 2017. pp. 149-64.を刊行した。また、(共著)「剥製の欲望から諸自己の詩学へ―一九世紀アメリカ文学における鳥の表象」『鳥と人間をめぐる思考:環境文学と人類学の対話』野田研一・奥野克巳編著, 勉誠出版, 2017. pp..103-24.も成果の一部といえる。また2017年度10月にはフランスでの国際会議にて研究発表を行った。そこでのフィールドバックを活かして、翌年度以降、英語論文として発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
この2年間で成してきた上記の実績は、本研究の目的に沿いながらも、あくまで各論であり、その理論的支柱の論文は現在改稿中である。2018年度中にできるだけインパクトのある学術誌に英語にて掲載することを目標とする。また、現在、出版準備中の論文および審査中の論文があり、これらを丁寧に仕上げることが目下の仕事となる。2018年度5月末にはアメリカでの国際会議にて研究発表をする予定であり、その準備およびフィードバックを反映した論文化を精緻化したい。また、ソローと並んで、メルヴィルの『タイピー』およびホイットマンの詩を対象に挙げていたが、こちらはやや遅れている。資料収集のみ進めているが、論文執筆にはいたっていない。4年のうちの3年目の2018年度には、大筋を定めて論考を準備する。
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Causes of Carryover |
一部の金額を翌年度へ繰越しする理由として、(1)主に資料収集につとめた当該年度とは異なり、次年度は研究内容の公表を始めるため、国内外への渡航費がかさむことが予想される、(2)。アメリカでの国際学会を中心に、口頭発表を行い、そこでのフィードバックを元に英語論文を仕上げていくため、英文校閲費がかさむことが予想される。以上から、次年度へ繰り越すことが、より効果的な研究費の使用となると判断した。
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Research Products
(7 results)