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2016 Fiscal Year Research-status Report

核時代におけるディストピア文学の想像力と戦争表象の研究

Research Project

Project/Area Number 16K16796
Research InstitutionYonezawa women's junior college

Principal Investigator

小林 亜希  山形県立米沢女子短期大学, 山形県立米沢女子短期大学, 准教授 (80711366)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2019-03-31
Keywordsイギリス文学 / 戦争表象 / 想像力 / ディストピア
Outline of Annual Research Achievements

本年度は海外出張により、大英図書館 (British Library) と帝国戦争博物館(Imperial War Museum)で資料調査を行った。以上の調査により、核時代の虚構物語と同時代の言説の関係性が明確になった。特に、ノルマンディー上陸作戦における〈トラウマ〉の重要性が明らかになったように思われる。また、イギリスにおいては第一次世界大戦の記憶が歴史化されつつある現状に対して、第二次世界大戦以降はアーカイブ化が十分に進んでいるとは言えず、核兵器をはじめとする戦争表象は十分に考察されてこなかったことも明らかになった。
以上の資料調査をもとに、11月20日に開催された日本英文学会東北支部第71回大会のシンポジウム「英文学とヴィジュアル・カルチャー―表象の多様性をめぐって」において、核時代の表象に着目した研究発表を行った(タイトル:「「蠅の王」は語ることができるか―核時代の表象不可能性」)。本発表では、核時代のコンテクストからLord of the Flies (1954) を読み直すことを提案するとともに、Peter Brook による映画(1963) も同様の問題意識を共有していることを指摘し、第二次世界大戦におけるイギリスの〈加害性〉を隠蔽/抑圧することによって生じた集団的トラウマが核時代の虚構物語に通底している可能性を論じた。
先行研究がほとんど行われていない本課題については、イギリスでの資料調査とシンポジウムにおける研究発表の成果によって、一年目の目的はほぼ果たされたと言える。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

イギリスでの資料調査によって、核時代における戦争表象を分析することの重要性がより明確になった。また、学会発表では、William Golding のLord of the Flies (1954) における核時代の表象不可能性について発表し、第二次世界大戦の集団的トラウマを起点として考察することで、小説のみならずPeter Brook の映画にも同様の問題が通底していることを考察することができた。核時代の虚構物語に内在する問題意識を把握することができたため、一年目の成果としては当初の計画を達成できたと言える。口頭発表の内容は次年度に論文として纏めたい。

Strategy for Future Research Activity

シンポジウムにおける議論の成果を学会プロシーディングスに発表する予定である。また、前年度の成果を敷衍し、論文として発表する予定である。今後は、前年度の成果の一つであるノルマンディー上陸作戦をめぐる集団的トラウマを同時代の虚構物語に通底する問題として考えてみたい。ノルマンディー上陸作戦に関連する表象としては「パラシュート」が重要だと思われるので、パラシュート表象についても調査を行う予定である。また、本年度から次年度にかけて、William Goldingを起点にしつつも、John WyndhamやNevil Shuteのテクストにも議論を広げていけるよう方策を推進中である。

Causes of Carryover

前年度の資料調査では、第二次世界大戦から核時代に至る表象に着目して調査したが、同時代の作家たちの言説及び批評については未着手であった。次年度は同時代の虚構物語が核時代のコンテクストにおいていかに書かれ、受容されたかを調査する必要がある。したがって、次年度も継続して国内及び国外の図書館で資料調査を行いたい。

Expenditure Plan for Carryover Budget

国内及びイギリスの大学図書館へ出張し、前年度未着手であった核時代の作家たちの未発表原稿、同時代の批評を資料調査することで、より広範な研究を行う予定である。時期は9月(国内)と3月(イギリス)を予定している。

  • Research Products

    (1 results)

All 2016

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] 「蠅の王」は語ることができるか―核時代の表象不可能性2016

    • Author(s)
      小林亜希
    • Organizer
      日本英文学会東北支部第71回大会
    • Place of Presentation
      秋田カレッジプラザ・秋田大学
    • Year and Date
      2016-11-20

URL: 

Published: 2018-01-16  

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