2018 Fiscal Year Annual Research Report
Dystopian Imaginations and Representations of War in Atomic Age
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16K16796
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Research Institution | Yonezawa women's junior college |
Principal Investigator |
小林 亜希 山形県立米沢女子短期大学, その他部局等, 准教授 (80711366)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イギリス文学 / 戦争表象 / 想像力 / ディストピア |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、9月に大英図書館での資料調査およびエクセター大学附属図書館での資料調査(10日間)を行った。John Wyndham が Alfred Tennyson の進化論的科学思想の影響を受けていたことを確認できたことは大英図書館における調査の成果の一つである。エクセター大学附属図書館での調査では、主に Lord of the Flies(1954) の初稿を閲覧・調査した。現在、出版されているエディションでは核戦争を描いた冒頭部を含む数か所が削除されており、削除箇所を確認することができたことの意義も大きい。 12月には東北大学で開催されたシンポジウム「語りの主観性―自由間接話法とその他―」に於いて、「The Inheritors(1955)における焦点化の問題と主観性」と題して「焦点化/視点」(「誰が何を見ているか」)の問題を論じた。当該テクストは同時代の戦争表象に直接的に言及するものではないが、〈加害性〉を隠蔽/抑圧することによって生じた集団的トラウマは、核時代における虚構物語の「焦点化/視点」の作用にも表れているように思われる。以上の研究発表では、物語論的な視点からテクスト分析を行ったが、前年度に考察した集団的トラウマにおける「記憶」の問題と、語りにおける「焦点化/視点」をはじめとするの問題を接続することで新しい知見を得られる可能性がある。今後は同時代の諸テクストにおいても、通底する想像力を見出すことができるか比較検討した上で、論文としてまとめる予定である。
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