2016 Fiscal Year Research-status Report
クィアとエコロジーの交錯と北米のマイノリティ女性作家たち
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16K16797
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Research Institution | Matsue National College of Technology |
Principal Investigator |
早水 英美 (岸野英美) 松江工業高等専門学校, 人文科学科, 講師 (90512252)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 北米の環境文学 / 北米の日系文学 / Ruth Ozeki / Hiromi Goto / エコロジー / クィア / カナダ / 環境正義 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)アメリカの文学・環境学会(ASLE-US)の主要なメンバーの一人であるChristoph Irmscher教授(インディアナ大学)の論文「ヴィクトリア朝のナチュラリストによる著書」(Writing by Victorian Naturalists)の翻訳を完成し、翻訳書『ケンブリッジ版カナダ文学史』の一部(第2部第8章)として刊行された。本論文は、カナダで執筆活動を行う日系作家Hiromi GotoとRuth Ozekiの作品とカナダの環境文学の伝統との繋がりを探る重要な手がかりとなる。 2)平成27年度に中四国アメリカ文学会冬季大会で発表した「食に潜むリスクの伝え方―Ruth L.OzekiのMy Year of Meats(1998)」の原稿に、Rachel Stein編著『環境正義の新しい展望』(New Perspective on Environmental Justice)の中の、人間による自然支配と男性による(人種・民族的、性的マイノリティを含む)女性支配の歴史的・構造的類似性を指摘し、自然とクィアを含む多様な女性たちとの結びつきを重視する議論を借用した分析を加え、改稿した。 3)平成28年度年3月には、本研究課題達成のための現地調査として、バンクーバーのブリティッシュ・コロンビア大学と、ニューヨークの公立図書館を訪れ、OzekiとGoto等の日系作家を含むアジア系作家に関連する情報と、エコフェミニズムやクィアとエコロジーに関連する資料を多数得ることができた。また、バンクーバーでの調査中にGoto氏を訪ね、日系やアジア系カナダ人作家の文学動向や、Goto氏の自然に対する眼差し、作品におけるクィアネスや女性たちの連携等について意見交換を行い、本研究達成のための有意義な情報を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に示した通り、国内では主に広島大学図書館にて、国外ではカナダとアメリカにて、日系作家と、クィアとエコロジーに関する情報を収集し、分析することができた。また、8月には、エコクリティシズム研究学会と多民族研究学会の合同大会で特別講演の講師として招待されたScott Slovic教授(アイダホ大学)とお会いし、本研究について沢山のご助言をいただいた。現地調査については、当初、ヨーク大学(トロント)を訪問する予定であったが、アジア系作家についての資料が多く存在するため、そして直接Hiromi Goto氏にお会いできることになったため、ブリティッシュ・コロンビア大学(バンクーバー)での調査に変更した。クィアとエコロジー関連の資料収集は公立図書館(ニューヨーク)を中心に行った。以上より本研究課題の進捗状況は概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は平成28年度の研究成果をもとに、Ruth OzekiのMy Year of Meats(1998)に関する論文を含む共著1冊と、Hiromi Gotoの作品Half Worldの翻訳書1冊が刊行予定である。また、カナダの中国系女性作家Madeleine Thien氏を招聘し、日本カナダ文学会の年次大会等で講演をしていただく。さらに海外での研究発表も予定している。
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Causes of Carryover |
国内外で計画していた以上に情報収集を行うことができたため、平成28年分の予算で計画していた書籍購入のための物品費、その他の使用額が予定していた額よりも少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は平成28年度に余った物品費、その他の経費未使用額と合わせ、海外からの作家招聘1回と、海外での研究発表1回を行う予定である。
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Research Products
(1 results)