2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K16800
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 俊一郎 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (00738065)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 西洋古典学 / ラテン文学 / 修辞学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ローマ帝政期の修辞学の教育的側面が同時代の文芸創作に与えた影響を、当時のラテン語およびギリシャ語の修辞学文献および関連する他の資料の詳細な検討から解明するものである。この解明は、模擬弁論の特徴として挙げられる警句・分割・潤色の三つの概念に沿って行われ、まずそれぞれの概念が修辞学においてどう捉えられていたかを当時の修辞学文献から確認し、続いて、それらが同時代の文芸諸作品にどう適用されていたかを、幅広いジャンルの文芸作品を取り上げて検討する。 本年度は、模擬弁論が弁論家の教育としてどのような特徴を備えていたのかを考察した。そのためにまず、大セネカの著作に現れる三つの概念、すなわち警句・分割・潤色を、今までの研究を踏まえ、またクインティリアヌスを始めとする帝政期の修辞学理論書や他の模擬弁論集も用いてより明確にした。その後、この三つの概念のうち、警句についての具体的検討に入った。扱う対象となる文献は白銀時代の諸文芸作品全般であるが、とりわけ、大セネカの息子であり、韻文による悲劇においても散文による哲学的著作においても警句の使用がきわめて頻繁である小セネカの著作を中心に取り上げた。大セネカの引用する模擬弁論家の警句がそこに多く取り入れられていることは既に指摘されているが、それらは類似表現の指摘にとどまっている。当年度の研究では、大セネカの記述や帝政期の修辞学理論を援用して、小セネカらにおける警句の種類や使われる場所にも着目することにより、模擬弁論からの警句の借用がたんなる表現上の類似だけから成り立つのではなく、著作全体における警句の機能や読者に与える心理的効果においても、模擬弁論における警句と類似性があることを検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画に基づいて、模擬弁論が弁論家の教育としてどのような特徴を備えていたのかを考察し、模擬弁論の分析における主要な三つの概念のうち、警句についての具体的検討を、白銀時代の諸文芸作品全般の検証を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的である、ローマ帝政期の修辞学の教育的側面が同時代の文芸創作に与えた影響のためには、既に予定している通り、模擬弁論の分析における主要な三つの概念である警句・分割・潤色の三つが修辞学においてどう捉えられていたかを当時の修辞学文献から確認し、続いて、それらが同時代の文芸諸作品にどう適用されていたかを、様々なジャンルの文学作品の中で検討することが重要である。警句については本年度の研究である程度の見通しが得られたので、今後は、他の二概念について、引き続き当時のテクストの丹念な分析に基づいて考察していく必要がある。
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[Journal Article] recuso2016
Author(s)
Shunichiro Yoshida
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Journal Title
Thesaurus Linguae Latinae
Volume: 11 (2)
Pages: 463-468
Peer Reviewed
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