2018 Fiscal Year Annual Research Report
A Study on the influence of rhetorical education on literature in the Roman imperial period
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16K16800
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 俊一郎 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (00738065)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 西洋古典学 / ラテン語 / ラテン文学 / 修辞学 / レトリック |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ローマ帝政期の修辞学が同時代の文芸活動に与えた影響を、修辞学的教育・訓練の中心であった模擬弁論(架空の主題に基づく弁論)に焦点を当てて研究することであった。模擬弁論が同時代の文学的創作活動に与えた影響については様々な角度からの研究が行われているが、元来は弁論家になるための教育手段であった模擬弁論の持つ特徴が、文芸作品の創作にどのように応用されていったのかについては、まだ十分に研究されていない。本研究はこの点に着目し、模擬弁論を中心としたこの時代の修辞学教育の文芸活動に対する影響をより詳しく解明することを目的とした。 この目的の遂行のため、本研究は次のように進められた。まず、模擬弁論が弁論家の教育としてどのような特徴を備えていたのかを考察した。その要点は、大セネカの著作の構成の基本となっている三つの概念、すなわち警句(短く鋭い言い回し)・分割(ある主張を、それを立証するための細かい問題に分けること)・潤色(自分の主張を有利に展開するために、主題に矛盾しない範囲で弁論家が自由に付け加えられる細かい背景や心情描写などのこと)に集約されると考えられるが、これらの概念を、大セネカに対する今までの研究を踏まえ、またクインティリアヌスを始めとする帝政期の修辞学理論書や他の模擬弁論集も用いてより明確にした。その後、この三つのそれぞれについて、同時代の実際の文芸諸作品(主に叙事詩・劇詩・歴史記述・古代小説)にその影響がどう現れているかを究明した。
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