2016 Fiscal Year Research-status Report
ジュディット・ゴーチエの日本関連作品研究―源泉調査から時代背景との関連性考察まで
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16K16801
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉川 順子 京都工芸繊維大学, 基盤科学系, 准教授 (90732032)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ジャポニスム / 日仏文化交流史 / ジュディット・ゴーチエ / 19世紀フランス文学 / 比較文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の計画は(1)「全9作品につき日本に関する情報の抽出作業をし表にまとめる」、及び平成29年度にかけて(2)「その表をもとに源泉資料の調査を行い、作品毎に源泉資料リストを作成し表に証拠となる箇所を書き加える」、(3)「源泉資料が判明した作品から表現方法の分析にとりかかる」であった。 (1)では、8作品について日本に関する情報の抽出作業を行った。これによって気づいたことは、日本の伝統文化に関する情報の重要性である。特にジャポニスム研究で重視される美術工芸ではなく無形の伝統文化に着目するのが本研究の独自な点である。 (2)では、当時の日本関連書籍約150冊を調査し、(1)で着目した日本の伝統文化に関係する記述をリストアップした。それをもとに平成28年度は日本の「祭り」が海外で知られた経緯をまとめ、その中で本作家の『簒奪者』における祭りの場面がいずれの資料をもとに執筆されたのかを明らかにした。 (3)では、『簒奪者』の祭りの場面の表現方法を分析し、文学作品一般における祭りの場面との比較や、19世紀ヨーロッパの祭りに対する見解との関連性の考察を行った。本研究の意義は、日本の伝統文化に対する外からの視点を歴史的に、また比較文化・比較文学的観点も導入しながら明らかにすることで現代の私たちの伝統文化理解を刷新していくことにある。 以上の成果を社会芸術学会で発表し、論文「ジャポニスムを通して見る日本の伝統文化―祭り」が査読を経て掲載されることに決定した。また、Julie Brock教授の「日仏・仏日翻訳学夏期セミナー」で本作家の文学作品による日本の神話・古典文学の紹介について発表する予定であったが病欠したため、その一部をRevue de litterature compareeに投稿中の論文「日本における比較文学:外国文学の受容から日本文学の伝達まで」(フランス語)に反映させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で記した通り、(1)では、9作品中8作品(『簒奪者』「花咲く葦の宿」『微笑みを売る女』「姫君十六の年」「小町」「神功皇后」「ヤマタの結婚」「天の機織り娘」)について日本に関する情報の抽出作業を行うことができた。『愛の姫君たち』については引き続き作業を行っていく。 (2)では、当初の予定(18-20世紀)を大幅に拡大して、16世紀の宣教師の時代から20世紀初頭までに出版された日本関連書籍約150冊を収集し、調査することができた。また、海外で知られた経緯や本作家の作品での描かれ方を今後分析する日本文化について、当初の大まかな予定(神話・信仰・史実・風土・社会・歳時記・文学・芸術)から、重要性に従ってより具体的な9項目の「伝統文化」に絞り込むことができた。 以上に基づいて、引き続き本作家の日本関連作品の源泉調査を行い、(3)で予定している通り、各作品における日本の伝統文化の表現方法、及び時代背景との関連性の分析を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き日本関連書籍の収集・調査を行い、ベースとなる資料体を充実化させていく。そして、それらの文献に基づいて、前述の通り9項目に絞った日本の伝統文化が海外で知られた経緯をまとめる。その中で本作家の日本関連作品がいかにして生まれ、欧米諸国における日本の伝統文化の認知とイメージ形成にいかなる役割を果たしたのかを明らかにする。 特に平成29年度は「国生み(神話)」を取り上げ、その成果を日仏美術学会で発表する。また、Yvan Daniel准教授による「ジュディット・ゴーチエ没後百年記念シンポジウム」に際して編集される論文集に、本作家による日本の伝統文化の紹介について論文を投稿する予定である。
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Research Products
(3 results)