2019 Fiscal Year Research-status Report
自然主義文学のアダプテーション:「予告」と「布石」による語りの戦略
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16K16805
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
中村 翠 京都市立芸術大学, 美術学部/美術研究科, 准教授 (00706301)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 仏文学 / 自然主義文学 / アダプテーション / 予告 / 布石 / ゾラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、文学をアダプテーション(翻案)した芸術作品において、初読に効果的な「予告」、再読を促す「布石」といった語りの手法がいかに置き換えられているかを追究することに主眼をおく。 2018年度末に終了するはずであった本課題であるが、最終年度は生成研究によってジャンル間比較の集大成を目指す予定であった。しかし、体調の変化により年度末に予定していた国外での資料調査などが行えず、1度目の期間延長を申請した。 2019年度に入り妊娠が確定した後は、当初の研究計画を変更して研究を進めた。渡航調査が必要となる生成研究のアプローチを延期する代わりに、本研究課題を展開する形で将来的に考案していた研究計画に着手するための前準備を始めた。すなわち、フランス自然主義文学と同時代の周辺諸国のアダプテーション作品をも比較分析対象に加えた。 前期には世界文学会関西支部会にて、ドイツ人作家ホフマンの『砂男』のフランス語オペラによるアダプテーションについて研究発表を行った(4月発表のため、前年度の報告書にもすでに言及)。また、自然主義文学周辺の時代および地域のアダプテーション作品に関する公演やワークショップに積極的に参加した。 ただし、上記のような修正した研究計画をもとに論文執筆を進めていく時間的余裕が充分にないまま、後期が始まってすぐ出産、産休育休に入ることになった。したがって2度目の期間延長の申請をすることとなった。この間の研究は、限られた方法ではあるが、すでに入手済みの研究書やオンラインで読める資料を対象として進めるよう試みた。 なお、すでに論文を執筆し投稿していた論文集"Emile Zola et Octave Mirbeau: regards croises" (Classiques Garnier社)は、2020年度中に発行される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度は妊娠が判明し、資料収集のための海外出張等はとりやめた他、後期は出産後の体調不良や育児によって国内外の学会・研究会参加はすべてキャンセルとなった。このため、大幅に研究の進度が遅れた。さらに年度末にはcovid-19の感染が拡大し、その防止対策によって図書館の閉鎖、学会・研究会のキャンセル等が相次いだ。よって資料・情報収集が困難となり、本格的な研究再開はいっそう遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は2020年度まで期間延長を申請し、この年度中に完了させることとする。 資料収集については、多くの図書館がまだ通常開館にいたっていない現状を鑑みると、予定していた資料調査、とくにアダプテーション作品が考案される際の生成研究を再開することは、困難となりそうである。そのため、オンラインで公開されている資料や、すでに収集が終わっている資料を中心に、分析読解を進めることとする。 学会発表については、発表参加を予定していた国内・国外の大規模な学会が今後もキャンセルされる場合は、少人数の研究会に積極的に参加し、発表していくように計画を調整する。 論文執筆については、2019年度中は妊娠・出産・育児のため進捗が遅れていたが、本格的な再開を試みる。執筆した論文は、国内外の所属学会の機関誌等に投稿する。
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Causes of Carryover |
2019年度は妊娠・出産を経たため、年度途中から国内外の出張がすべてキャンセルとなり、予定されていた旅費を使用しなかったため。次年度に、書籍や視聴覚アーカイブ等研究資料の購入、および論文執筆のためのPC周辺機器等に使用する予定である。
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