2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K16810
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
渡邉 登紀 日本大学, 文理学部, 准教授 (50632030)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 鮑照 / 陶淵明 / 湛方生 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、平成28年に継続して『鮑氏集』を中心とした六朝関連の古籍調査を行った。その成果をもとに研究協力者との研究会を定期的に開催し、研究は順調に進めている。 古籍調査においては、平成28年度からの継続である上海図書館に加えて、復旦大学図書館(中国・上海市)、中国国家図書館(中国・北京市)、京都大学人文科学研究所(京都市)にて、各図書館に所蔵される『鮑氏集』諸本をはじめとした文献調査を行った。これらの調査を経て、近年、「新資料の発見」とされていた上海図書館蔵『鮑氏集』孫毓修本の史料価値について、再検討を行うことが可能になった。上海図書館蔵『鮑氏集』孫毓修本は『鮑氏集』毛校宋本の異本を臨写した校本であるという説が提唱されていたのに対し、本研究によって、上海図書館蔵『鮑氏集』孫毓修本は『鮑氏集』毛校宋本を臨写した校本であることを明らかになった。さらに、民国期にはいって上海商務印書館が『鮑氏集』毛校宋本を入手して以降に、孫毓修を含めた上海商務印書館の関係者たちの手によって続々と臨写されていたことについても明らかになった。 本研究の意義は、民国期における『鮑氏集』毛校宋本の流伝状況の解明を通じて、民国期における六朝文学テクストの流通の様相を実証したことにある。次年度である平成30年度には、明清期における『鮑氏集』毛校宋本等の流伝状況の解明を行うと同時に、六朝文学テクストに関する「新資料」の発掘を継続する予定であり、本研究の重要性は、現存資料の限界性を指摘される六朝文学テクストについて、その失われた六朝文学テクストの復元の可能性を追求するという点にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画から変更は生じているが、おおむね順調に進展している。計画当初、本研究は、晋宋期の寒門文人(主に陶淵明・湛方生・鮑照)の文学活動を解明するために、彼らの詩文をテクスト分析・考察することを、その作業の主とし、その一方で、六朝文学テクストに関する「新資料」の発掘を従と位置づけていたが、実際に作業を進めていくなかで、古籍調査による六朝文学テクストの流通状況の解明が、陶淵明・湛方生・鮑照らの文学テクスト研究を行う上で優先する必要が生じ、平成28年度同様に、本年度も六朝文学テクストの流通状況の解明に比重を移して研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、当初の計画を変更し、古籍調査による文学テクストの流通状況の解明を比重をおいて、その上で晋宋寒門文人(主に陶淵明・湛方生・鮑照)の詩文のテクスト分析・考察を行う予定である。平成29年度は民国期における『鮑氏集』毛校宋本の流伝状況を明らかにしたので、その研究の成果をもとに、平成30年度は、明清期における『鮑氏集』諸本の流伝状況を行うと同時に、六朝文学テクストの「新資料」の発掘を試みる。古籍調査は、上海図書館・中国国家図書館(北京)・台湾国立国家図書館(台北)で行うことを予定している。
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