2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16812
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
川 浩二 早稲田大学, 文学学術院, 助教 (30386578)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 歴史小説 / 詠史詩 / 歴史劇 / 地方劇 / 朱元璋 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、以下の諸点について検討を進めるものとした。 1.歴史小説『雲合奇蹤』と史書・史劇との比較、歴史小説制作のプロセスの分析 2.『明史紀事本末』所載の逸話・異説と歴史小説との比較分析 3.詠史詩『擬明史楽府』と、歴史小説の詠史詩における逸話・異説に対する態度の比較分析 4.歴史小説の本文テキストの典拠との比較の可視化 平成28年度は、研究の初年度として、まず入手済みの資料について電子テキストの校訂と新たな資料の電子テキスト化を進めた。編年体史書『皇明通紀』のテキストデータ化を進め、歴史小説「明英烈」については、『国朝英烈伝』『皇明英烈伝』『雲合奇蹤』の、申請者が現在所有している校訂前の電子テキストを、版本との対照によって校訂している。 7月には早稲田大学多元文化学会大会でのシンポジウムで「現代中国の地方演劇における新編歴史劇」と題して口頭発表を行い、9月には入手済みの資料をもとに上海復旦大学で開催した国際シンポジウムで「南方地方戯中明英烈故事劇目與歴史小説『雲合奇蹤』」と題して口頭発表を行った。 秋期には現地調査により新たな資料の入手をはかった。浙江省金華に渡航し、現地に伝わる伝承を調査したほか、当地の地方劇であるブ劇の高腔に見られる演目『太平春』の上演状況について劇団に聞き取りを行った。また浙江省杭州の浙江図書館にて資料調査を行った。 これらの資料を、入手済みの資料と合わせて検討し、『雲合奇蹤』と比較したうえで、2月に京都で開催された中国古典小説研究会関西例会において「南方の地方演劇における「明英烈」故事の演目と歴史小説」と題して口頭発表を行った。また、早稲田大学多元文化学会の学会誌『多元文化』第6号に『現代中国の地方演劇における新編歴史劇―「朱元璋斬婿」の展開から―』と題した論考を掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述の検討内容のうち、今年度に進める予定であった1.歴史小説『雲合奇蹤』と史書・史劇との比較、歴史小説制作のプロセスの分析については、具体的な作業を通じて検討し、口頭発表を行うことができた。また、4.歴史小説の本文テキストの典拠との比較の可視化についても、基礎作業を進めている。また当初の予定にはなかったが、明代を題材とした史書と歴史文学の関係の検討の一環として、現代の地方劇における明朝開国の物語について材料を得て分析することができた。したがって、おおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度上半期には、史書『明史紀事本末』における、考証済みの逸話・異説の摂取を分析する。とくに明朝初期の記事を中心にし、歴史小説『雲合奇蹤』と比較することで、それぞれがどのような立場で、考証され否定された後の言説を取り入れているかを分析する。夏期に一週間程度上海と浙江に渡航し最終的な入手すべき資料を補充する。 二年目下半期には、清・尤トウ『擬明史楽府』をはじめとする文人層による詠史詩と、明代に作られた歴史小説『国朝英烈伝』・『皇明英烈伝』および『雲合奇蹤』等における詠史詩の比較を行う。秋以降は入手済みの資料を整理して公開に備える。web上の成果公開についてはデータの校正が終わりしだい、順次公開する。
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Causes of Carryover |
購入した資料が予定よりもじゃっかん少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度中に追加の資料購入に当てる予定である。
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